Jをめぐる冒険BACK NUMBER
大久保「完敗」、小林「強かった」。
川崎に完勝した浦和、遂に完成形へ。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/04/26 17:00
攻撃的なサッカーを、それぞれ違う方法で共に追求してきた浦和と川崎。今回は浦和に軍配が上がった。
李「普通にやれば、3人で1点は取れる」
55分に生まれた得点シーンも、オートマチズムと個の能力が高いレベルで融合されたものだ。
森脇良太が右サイドからグラウンダーのパスを中央の李へ通す。その瞬間、李の手前にいた興梠が裏を狙って川崎DFの気を引くと、李はヒールで落として武藤にパス。慌てて大島が飛び込んだものの、武藤がゴール右隅に流し込んだ。
武藤が「今、3人の距離感がすごくいい。距離感がいいからこそワンタッチの崩しが生まれる」と言えば、李も「ミシャ(ペトロヴィッチ監督)のサッカーも5年目だし、成熟してきた感じがする。普通にやれば、3人で1点は取れる自信があった」と胸を張った。
遠藤が明かしたピッチ上での“即席会議”の内容は?
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際立っていた浦和の「コンパクト」「トランジション」「オートマチズム」――。
しかし、それ以上に「浦和、強し」を最も印象づけられたのは、むしろ後半なかば以降の戦い方だった。
先制点を奪った浦和は、前半ほど激しく前からプレスをかけなくなった。もちろん、4日前にシドニーでACLを戦った影響もあっただろうが、代わってその時間帯から見られるようになったのが、数人の選手がピッチ上で話し込む様子だった。75分頃の“即席会議”の模様を遠藤が明かす。
「もうブロックを敷いて守り切る時間帯だったので、5-4-1にしようかとか、どういう風にプレッシャーをかけるかとかを確認して、行くところは行くけど、動かされても我慢してコンパクトにすることだけはしっかりやろう、という話をしていました」
戦況に応じた判断を行い、ピッチ上でチームとして共有できる――。それこそ、今季の浦和の強さの源のように感じられた。
一方、リーグ初黒星を喫した川崎にとって救いなのは、“エクスキューズ”が多いことかもしれない。
「ここまで決して内容が良いわけではない。修正しなければいけないことは多いけど、毎試合のようにメンバーが変わるから、なかなか修正できないでいる」
中村がそう明かしたのは、1-0で勝利した4月10日のサガン鳥栖戦後のことだった。
ケガ人が多く、毎試合のようにメンバー変更を余儀なくされている。あまりにうまくいかなくて前半のうちにシステムを変えたり、選手を代えたりしたことは、一度だけではない。