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大久保「完敗」、小林「強かった」。
川崎に完勝した浦和、遂に完成形へ。 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2016/04/26 17:00

大久保「完敗」、小林「強かった」。川崎に完勝した浦和、遂に完成形へ。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

攻撃的なサッカーを、それぞれ違う方法で共に追求してきた浦和と川崎。今回は浦和に軍配が上がった。

ボールを奪い返す能力でもリーグトップの2チーム。

 もっとも、川崎のパスワークを封じるためには、陣形をコンパクトに保つだけでは難しい。失ったボールをいかに素早く回収できるか――。浦和はトランジション(攻守の切り替え)の速さ、寄せの迫力も素晴らしく、川崎に自由にボールを持たせなかった。

 サッカー専門紙『エル・ゴラッソ』によると、浦和が今季、ボールロストから5秒以内に奪い返した回数は88回で、これはリーグ1位の数字である。一方、川崎も今季はボールの回収に力を注ぎ、84回で2位につけている。ボールを保持することに優れた両チームの攻防は、ボールを回収する力を競う戦いでもあったのだ。

 そしてこの勝負に勝ったのも、浦和だった。

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 ボールを保持して前半のピッチを掌握した浦和は、ボールを失った瞬間から川崎の選手に襲いかかる。主導権を握れていたから、すぐさま襲いかかれたとも言える。

「奪っても、5~10メートルのパスコースは全部消されていたし、悠や嘉人さんもしっかりマークされていて付けづらかった。それで横パスが狙われてしまった」

 田坂祐介のコメントは、川崎がいかに難しい状況に陥っていたかを窺わせた。

浦和の「オートマチズム」が成熟の域に。

 こうした「コンパクト」や「トランジション」がコインの表なら、それと切っても切り離せないコインの裏は、「オートマチズム」の成熟だろう。

 浦和にとって、湘南ベルマーレから加わった遠藤航のサイドチェンジも大きな武器ではあるが、柏木や阿部、遠藤による縦パスこそ、浦和が作り上げてきた“攻撃のスイッチ”だ。前線にくさびが打ち込まれた瞬間に、浦和の攻撃は一気に加速する。

 その際モノを言うのが、成熟の域に達したオートマチズムと、それを実現させる個の能力だった。

 ウイングバックの宇賀神友弥と関根貴大が“幅”を取って川崎のディフェンスラインを開かせると、中央では興梠、李、武藤雄樹がスタンバイする。

 3人のうちの誰かが中盤に少し落ちてくさびを受ける。同時に他の選手が裏を狙うので、川崎のDFは思い切ってインターセプトを狙えない。誰かが落ちて、誰かが裏へ――柏木がよく言う「段差」である。

 縦パスが入ってしまえば、浦和のものだ。フリックパスで角度を変えて、川崎のマークを剥がしにかかる。とりわけ前半は、川崎が4バックで対応したため、5トップ気味の浦和は流れるようなパスワークで川崎のゴールに迫った。「浦和は阿吽の呼吸だった」と中村も認めざるを得なかった。

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