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五輪選考会を4度体験した者として。
伊藤華英が語る北島康介と萩野公介。
posted2016/04/03 11:00
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph by
AFLO
この時がついにやってきた。ロンドン五輪から、早いものでもう4年経ったということだ。今年は、リオデジャネイロ五輪が開催される。その選考会として、4月4日から日本選手権水泳競技大会が行われる。
自分が出場した時を思い出すだけで今でも鳥肌が立ち、緊張感が目の前に押し寄せてくる。そのくらい深く、貴重な経験だった。特に五輪の年は、全員がここへ向けて完璧に調整してくるので、他の年よりも格段にレベルが上がる。毎年出場している選手にとってさえ、想像以上の緊張感のある大会なのだ。
全ての選手が4年間を費やし、この時の為に練習を積んできた。その中でも今回の注目は、33歳になった北島康介選手だろう。日本の水泳界で「ミスターオリンピック」と言えば彼のことだ。
実際、Kosuke Kitajimaの名前は世界で轟いている。オリンピックのメダルを22個獲得した米国のマイケル・フェルプスや、長らく世界のトップに君臨するマルチスイマー、ライアン・ロクテ選手など、世界を代表する競泳選手と並べて語られる存在だ。
北島選手は2000年シドニー五輪から4大会に出場し、アテネでは100m、200mで2冠。北京でも同種目で2冠。リレーで通算3つのメダルを獲得。高速化が進む水泳界で、日本人でも対等以上に戦えることを証明した。
日本水泳界を変えた「北島先輩」。
同時に、私が現役のころの北島選手は日本チーム全体を盛り上げるムードメーカーだった。彼が話すこと、行うことのひとつひとつが他の選手たちにとっては刺激になっていた。同じチームに彼がいるというだけで、「私たちもやれる。もっといける」という気持ちになったものだ。近年の日本水泳界を底上げした、と言っても過言ではないと思う。
その北島選手がよく言っていた言葉は、今でも覚えている。「オンとオフの切り替えをしっかりする」、「プロフェッショナリズムを持って水泳に取り組む」という2つだ。
北京オリンピックで金メダルを獲ったレース直前、彼の姿を見て「これがゾーンというものか」と感じたことも忘れられない。本番を前に最大の精神集中を目指すのは当たり前のことではあるが、一緒に泳ぐ海外のライバルの選手たちもあの異様な気迫に圧倒されたことだろう。