サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
中核選手と異端者を抱え込むハリル。
戦術の幅を象徴するのは原口元気!
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAsami Enomoto
posted2016/03/25 14:00
ブンデスリーガで3位につけ来季のCL出場に邁進するヘルタでレギュラーに定着している原口元気。
監督の指示を、選手同士の話し合いで微調整する。
そしてこの試合のもう1つの課題は、ピッチの上で選手たちが判断してプレーするということだった。
ハリルホジッチの注文は細かいし、選ぶ言葉もストレートなものだ。また練習中には、まるで12番目の選手のようにチームを盛り上げていた前任者のアギーレと比べると、雰囲気は暗い。そうしたパーソナリティゆえに、現指揮官が就任してからの1年間は、監督の顔色をうかがい、その要求に応えようとして特長を出せない選手が多かった。
しかし、ハリルホジッチは選手をコマのように扱うタイプではないと長谷部は感じている。
「監督はけっこう話しますし、細かいことまでミーティングで話すので、(選手が)従いすぎてしまう部分もあります。でも、監督はそれをあまり求めていないというか……。ヒントのようなものを与えるけど、『ピッチの上でやるのは選手たちだ』というのは1年目からずっと言っていました。それを選手もだんだんわかってきた部分もあると思いますね」
この試合で使った4-3-1-2の練習に取り組んだのは、試合前日くらいだったという。そえゆえに、長谷部はトレーニング以外の多くの時間を選手の間でコミュニケーションをとることに割いたという。
「(練習場以外でも)けっこうコミュニケーションはとっていました。中盤の選手がサイドに出てもいい、張ってもいいというようなことも考え、話し合ってやっていましたね」
「感覚的」というキーワードの意味するところ。
だからこそ、代表のキャプテンはこの試合の最大の収穫をこんな風に話した。
「自分たちで考える力というか、ピッチの中でもそうだし、試合に出ていない選手もそうですけど、みんなでかなりコミュニケーションをとって、監督が言っていることだけではなく、自分たちで考えて連係をとってやるという部分が出てきたかなと思います」
殊勲の先制ゴールを決めた岡崎慎司の口からは、この日のプレーの根底として『感覚的』というキーワードが出た。つまり監督からの指示と照らし合わせながら頭で考えてやるわけではなく、シチュエーションごとに流れを読みながら、その場で最適の判断をしていこうということだろう。ひとつひとつのプレーをする際に考えなくてもいいように、試合前に具体的なシチュエーションに応じた対策を用意していたからこそ、ピッチ上で瞬時に判断出来たということだ。
5-0というスコアも、最終予選進出が決定したという事実も、大した意味はない。
むしろ、ほんの小さなものであっても、進化の兆しを感じられたのがこの試合の最大の収穫だろう。そして、それを可能にしたのが、試合前にチームが共有していた課題だったのだ。