炎の一筆入魂BACK NUMBER
忘れちゃいけない広島のキーマン。
福井優也、成長して投手陣の柱に。
posted2016/03/20 10:30
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
NIKKAN SPORTS
昨季得点力不足に終わった攻撃陣の不安が、投手陣の不安の大きさに隠れている。前エースの前田健太がポスティング制度で米大リーグ・ドジャースへの移籍が決まった昨年末から、広島の台所事情の話題の方が地元紙の紙面に躍ることが多かった。
「黒田現役続行」「『ポストマエケン』は大瀬良」「ドラフト1位岡田新人王狙う」「大瀬良、右肘痛で開幕絶望」「ジョンソン開幕投手」……。
誰かお忘れではないか。もっと取り上げられるべき投手がいる。福井優也だ。メディアには大きく話題に挙がらなかったが、個人的には今季の広島のキーマンと見ている。
「普通にやれば勝てる」はずだが……。
入団時からブルペンでは力強い球を投げ、高評価を得ていた。ブルペンの球を知る者から「普通にやれば勝てる」と言われ続けてきた。しかしルーキーイヤーの'11年に8勝を挙げてから苦しいシーズンを過ごし、一昨年まで4年で14勝20敗。中継ぎ転向も経験した。1球1球の力はある。こんなもんじゃないはずだ。持っているものを生かし切れていない印象が強かった。
制球がばらつき、ストライクを取りに行ったストレートを痛打される――悪いときの福井の投球パターンだった。チームとして投手陣に「四球厳禁」が言い渡された時期があった。ときには3ボールにも苦言を呈された。功罪あるチーム方針は、福井には罪、重荷となった。腕が縮こまり、投球に大胆さが欠ける。持ち味は薄れ、制球に対する過剰な意識が悪循環を生んだ。
図太い性格に見られやすいが、繊細な人間だ。マウンドで気になることがあると、そこばかり気になり集中力が欠如することもあった。ボールが続くと焦り、余計集中できない。日常生活から周囲を気にする面もあった。同じ先発のチームメートの評価を気にし、また周囲から自分がどのように評価されているか気にしてしまう。
自分の弱さは誰よりも自分が分かっていた。そして変わる必要性を強く感じていた。
昨季は日常生活から態度を改めた。