球道雑記BACK NUMBER
「唯一の存在」ダルの11番を継ぐ大谷。
涌井秀章は開幕戦の相手に何を思う。
posted2016/03/19 10:50
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
NIKKAN SPORTS
2016年のQVCマリンフィールドは、ゴージャスなマッチアップで幕を開ける。
千葉ロッテ・涌井秀章×北海道日本ハム・大谷翔平。
昨年、パ・リーグの最多勝タイトルを分け合った両雄の対決は、今年の日本プロ野球界におけるプレミアクラスのマッチアップと言えるだろう。チケットは発売開始と共にほぼソールドアウト。両チームのファンも見逃せない一戦と捉えているようだ。
涌井には、かつて投げ合うことで気持ちに火をつけられる最高のライバルがいた。
現在はテキサス・レンジャーズで活躍するダルビッシュ有だ。そのダルビッシュが北海道日本ハム時代に付けていた背番号11を、現在は大谷が引き継いでいる。
ダルビッシュと投げ合った伝説の132球。
今も筆者の記憶に残っている試合がある。
2008年3月27日に札幌ドームで行われた北海道日本ハム対埼玉西武戦である。
当時、まだ埼玉西武のユニフォームを着ていた涌井と、北海道日本ハムのユニフォームを着たダルビッシュが対戦したこの試合は、9回まで互いに点を譲らず息詰まる投手戦となった。
先にマウンドを降りたのはダルビッシュの方だった。9回を投げ終えた時点で球数は132球。再三走者を許しはしたが決定打を与えず無失点。この時点でスコアは0-0だった。
互いに「ライバル」と認め合う若い2人の投げ合いは、見ている側の勝手な意見として「まだ見ていたい」、そんな気持ちにさせられた。
しかし3月の札幌は、ドーム球場とは言え、だいぶ肌寒さが残る時期。それでいて一瞬の気も許せない。そんな状況で投げた132球は、ベンチにすれば十分無理をさせた方と言えるだろう。ダルビッシュの交代も当然の采配と言えた。
延長に入った10回裏、それまで完璧な投球を見せていた涌井が、まるで緊張の糸がプッツリ切れてしまったかのように、先頭打者スレッジに四球を与えた。続く小谷野に犠打を決められピンチを広げると、二人の敬遠で塁を埋めて1死満塁。
そして、代打の高橋信二にサヨナラ安打を打たれ、この試合は幕を閉じた。涌井の球数もダルビッシュと同じ132球、打者35人で終わったのはなんとも奇遇だった。