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オリックス・吉田凌の“昭和の精神”。
自己犠牲は時代錯誤か、大投手の証か。
posted2016/03/17 10:50
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
NIKKAN SPORTS
個人的に、将来的な飛躍はもとより、1年目から一軍マウンドで投げてほしいと願うルーキーがいる。
オリックスのドラフト5位・吉田凌である。
二軍スタートとなった春季キャンプ以降、吉田の名が挙がることは少ない。東海大相模時代の盟友でドラフト1位で中日に入団した小笠原慎之介や、エースとして昨夏の甲子園で仙台育英準優勝の立役者となって、U-18ワールドカップでも好投した、現在チームメートの佐藤世那らの方がメディアに取り上げられがちなのは事実だ。
それでも、初のフリー打撃での登板で育成2位・赤松幸輔のバットをへし折ったと報道で知れば、プロでも持ち味のストレートで勝負を挑んでいることが窺えるし、高校の卒業式で「日本シリーズで小笠原と投げ合いたい」と語れば、本当に実現してくれるのではないか、と期待を膨らませてしまう。
吉田に備わっている「背負う」というマインド。
吉田のポテンシャルが高いのは、甲子園で優勝に貢献した実績やプロとなった現実を見れば分かるものだが、他にも、彼の豊かな可能性を予感させる下地は存在する。
それは、吉田のなかに潜在的に備わっている、「背負う」というマインドだ。
「体がどうなってもいい」
登板過多がセンシティブに捉えられるようになり、故障しないためのトレーニング法も普及した昨今、「肩、肘が壊れてもいい」とはっきり言ってのける若い選手は少ないはずである。
しかし吉田は、そんな“禁句”を恐れずに発し、結果を出すことで、その気概が口からでまかせではないことを証明してきた。