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3カ月ぶりのゴールは、収穫も3つ!
香川真司はドルトの「中心」になる。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/03/15 10:50
ブンデスでほぼ2位以上を確定させたうえでバイエルンを追うドルトムント。香川の攻撃力は絶対に必要とされている。
格上相手に使う布陣に、香川のポジションはなかった。
現時点で、ドルトムントのチームとしての能力はバイエルンに及ばない。つまり、格上との戦いだった。そして、あの試合で試したフォーメーションは、攻撃時に3-4-3、守備時に5-4-1になる特殊なもの。そのなかに、香川のポジションはなかった。
今年に入ってからのアウェーゲームでは顕著だが、自分たちがゲームを支配する戦いをできない場合、トゥヘル監督にとって香川の優先順位は高くない。
昨シーズンのドルトムントは引いた相手を崩せずに苦しみ、守備を固めてカウンターを狙うチームに対するアレルギーのようなものが生まれていた。今シーズンの前半戦は、そのアレルギーを取り除く作業に重点があった。いかに相手の守備の網を切り裂いていくかが課題となる中で、香川は重要なピースを担っていた。アシストや、その1つ前のパスを、かつてドルトムントに所属していた時期よりもはるかにハイペースで供給してきた。
しかしシーズンの後半に入ると、調子をあげてきたボルシアMG、ヘルタやシュツットガルトなど、力のあるチームとアウェーで戦う試合が多く組まれていた。そのなかで、トゥヘルはドルトムントの進化の次のステップとして、対戦相手の特長に応じたサッカーを要求するようになったのだ。
週2の連戦に、心の余裕を奪われそうになるが……。
しかも2月以降は、ほぼ週に2試合のペースで試合がある。ヨーロッパカップ戦に参戦していなければ、1週間かけて次の対戦相手の特長を消す対策に取り組める。
ところが連戦が続くドルトムントは、その策を試合当日に授けられることも多々あった。
当然そこには、戸惑いも生まれる。香川もチームの雰囲気について、こう話していた。
「勝っているから、もっと気持ち的な余裕があってもいいんですけど……。試合内容は今年に入ってからついてきてないところがあるので、苦しい。(監督からは)結構厳しく要求されることもあり、メンタルが少しネガティブになってる部分はあると思います」
ただ、トゥヘルの施策はチームに着実に反映されている。3月5日のバイエルン戦も、3月10日のELトッテナム戦も、強豪を相手に試合内容を劇的に向上させて見せた。バイエルン戦は引き分け、トッテナム戦は3-0と、内容だけでなく結果にも表れている。となれば、監督のやり方に不満を覚えたり、文句を言ったりする余地はない。腹をくくるしかないのだ。