松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
なぜ松山英樹は逆境に耐えられるか。
「軸を取り戻す」という確固たる目標。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/03/10 10:40
辛い状況でも、表情はつとめて明るく。松山英樹の強さの理由の1つは、この精神的なタフさにある。
華やかな日々から、一転屈辱的な4日間に。
最終日。松山は再びオーバーパーに甘んじた。「73」のゴルフは2日目ほど崩れたわけではないが、パー3の4番では池に落としてトリプルボギー、7番でも池につかまり、ダブルボギー。上がり3ホールは上向き、尻上がりの締め括りに少しだけ安堵していた。それでも、「練習できてないのもあるけど、ちゃんとしたものを練習して持ってこないと、こうやって風が強いところとか、難しいコンディションになったところではできない」と自戒の念を込めて振り返った。
長い長い4日間が終わった。わずか1カ月前、米ツアー2勝目を挙げたあのフェニックスオープンのように、大観衆の注目を一身に浴びた4日間もあれば、今大会のように屈辱的な経緯や数字に我慢を重ね、それでも報われずして終わる4日間もある。
華やかなチャンピオンが、一転して試練に耐え続ける修行僧へ。そんなとき松山は、何を想い、何を目指して耐えているのか。
軸を失った時期は「ふふふ。秘密っすよ」。
「ねえねえ、松山くん。ちゃんとしたものを練習して持ってこれなかったのは、股関節を痛めて練習できなかったからだよね? 故障の間接的な影響が今週の結果を招いたと思ってる?」
すると、松山は首を横に振った。
「いや、違うと思う。誰だって、ちょっと練習できないことはあるわけだし、それだけでこういうことになる(大崩れする)わけじゃない。軸となるものがあれば、揺るがないんです。それがあれば、風が吹こうと、ちょっとぐらい休もうと、揺るがない」
軸となるもの。それは何を指すのだろうか。
「軸となるものは、“ある”と感じたことはあるの?」
「あります。でも、一度失ったものは、なかなか帰ってこないっす」
「いつ?」
「だいぶ前」
「プロ入りしてからだよね?」
「そう」
「へえー。で、いついつ?」
「ふふふ。秘密っすよ」