欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
権田修一が本田圭佑の理想を叶える。
SVホルンが昇格の末に見据えるもの。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph bySV Horn
posted2016/03/10 11:00
昨季はオーバートレーニング症候群に苦しんだ権田だが、ホルンでは明るい表情を見せている。
欧州で直面する圧倒的なGKの層の厚さ。
GKが立身していくためには、コーチング力は不可欠。それが外国の環境となれば、語学という壁を乗り越える必要がある。3部とはいえ、ここはれっきとした欧州の舞台。権田は本当の意味で世界に挑戦する、その第一歩を踏み出したのである。
ラピド・ウィーン戦。相手のGKは10代だった。チームメイトも含め、権田は「あらためて、欧州はGKの層が厚い」と語る。決して日本人GKの評価が高いとはいえないこの本場で、どうキャリアビジョンを描いているのか。そこには、1人しかピッチに立つことができないGK独特の考えが隠されていた。
ミランのドンナルマに、アッビアーティの影響を見る。
「若い有能なGKを見ていると、『こういう選手とこれから勝負していくのか』と思う。ただ、年齢に関してはあまり関係ないと信じている。欧州のリーグ戦を観る時にGKの年齢を意識しているんですけど、例えばイングランド・プレミアリーグなんかは30代GKがたくさんいる。しかも第2、第3GKにもいます。一方でミランのドンナルマみたいに、16歳でデビューするような選手もいる。ブッフォンもデビューが10代だったので、本当にいろんな可能性が欧州には溢れていると思う。
ただ例えばドンナルマにしても、同じチームにベテランのアッビアーティがいなかったら、きっと今の年齢で正GKにはなれていないと思う。結局僕がFC東京でなんとかなったのは、シオさん(塩田仁史・現大宮)やエノさん(榎本達也)がいたから。どうしても試合に出ているGKがフォーカスされるけど、その選手と普段争っているGKの力はものすごく大事。
試合に出ていないから、良いGKではないということではないんです。チームのレベルが上がれば上がるほど、GKは2番手でも3番手でも能力の高さが求められる。なぜ、2番手にベテランGKを置く傾向があるのか。それは正GKに何かアクシデントが起きても、落ち着いて自分のプレーができるから。成長や育成だけを考えるクラブなら、2番手は若手でも良い。ただ将来的に強いチームを目指すのであれば、レギュラーだろうが控えだろうが、レベルの高いGKが必要なんです」