欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
権田修一が本田圭佑の理想を叶える。
SVホルンが昇格の末に見据えるもの。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph bySV Horn
posted2016/03/10 11:00
昨季はオーバートレーニング症候群に苦しんだ権田だが、ホルンでは明るい表情を見せている。
本田の描くビジョンを実現する基本姿勢を作る。
「ホルンは今、チームの軸になる中央ラインに良い選手たちがいる。彼らに関しては、『なんで3部にいるの?』と思うぐらいのレベルです。要所に良い選手がいるので、チームとしては大崩れはしない。
ただその反面、そうした個々の技術に頼りすぎてしまうと、チームが2部や1部に上がって敵のレベルが上がると、難しくなる。やっぱり、3部だから何とかなっている、ではダメだと思うんですよ。ホルンが掲げるビジョンからすると、これからどんどんスピード感を持って上に行く必要がある。選手は当然上のカテゴリーに行けば入れ替わりもあるだろうけど、チームが確固たる戦い方の形を持っていないといけない。
せっかく(本田)圭佑くん、そして『ホンダ エスティーロ』(ホルンを実質経営する会社)がチームを作って、日本人選手も獲得して高い目標に向かっていこうとしている。それなのに、これまでいた選手たちのクオリティに頼っていて、カテゴリーが上がればまた選手を獲得するやり方だけではチームとしての積み重ねがない。そこのスタイルを、僕らでここから作っていきたい。一つ言えることは、圭佑くんはもちろんのこと、監督の考えも基本姿勢は攻撃的だということ。そこはカギになってくると思います」
日本人にもドイツ語で指示を出す大切さ。
権田は、積極的にチームメイトとコミュニケーションを図っている。クロアチアに出向いたキャンプでも日本人選手だけで固まらず、英語とこれまで自学してきたイタリア語を駆使し、会話を重ねた。
オーストリアの公用語は、ドイツ語。遅かれ早かれ、習得は必要になってくる。イタリア語を学んできたように、語学に対して前のめりな姿勢を持つ権田。すでに、彼の頭の中からはドイツ語が溢れ出している。
「試合でのコーチングは、基本は全部ドイツ語ですることにしました。日本人選手たちとも話して、例えばボールがオフザピッチになった時に細かい指示をする時は日本語を使うこともあるけど、基本的には彼らにもドイツ語で指示する。日本人選手も他の選手からはドイツ語で指示が伝えられる。それに僕が日本人に出す指示を、他の選手も理解したほうが良いに決まっている。『ボールに行け!』とドイツ語で言えば、他のチームメイトもその先のサポートやカバーがし易い。チーム全員を統一した動きにするためにも、最後尾からドイツ語で伝えていくことは大切だと思います。
サッカーの用語は、だいぶ使えるようになってきました。別に試合中にニュースを読むわけではないので(笑)、たくさんの単語を使うことはない。最初はずっと頭のなかに日本語が出てきて、それをドイツ語に変換する作業をしてきたけど、今はドイツ語がだいぶ浮かぶようになってきた。
本当はもっと話せるようになって、ピッチ外での会話にもどんどん入って行きたい。まだまだ日常会話は難しいですけど、できるだけ会話に入るようにしています。だって、話せないままでいるのはめちゃくちゃ悔しいですからね」