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金字塔間近の佐藤寿人と大久保嘉人。
福西崇史が語る中山雅史との共通点。
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/02/24 10:40
ゼロックス・スーパー杯で見せたゴールには、スペースを生み出して飛び込む、佐藤寿人らしさが凝縮されていた。
“わざと止まる”こともある大久保嘉人。
一方の大久保選手はダイレクトシュートも上手いですが、ドリブル突破で自ら打開したり、シュートレンジの広さも魅力です。そんなプレースタイルだからか、動いてフリーになるだけではなく“わざと止まって”ボールを受けるケースがあります。
大久保選手の昨年のゴールから例を挙げるとすれば、セカンドステージの広島戦(第14節)で決めた得点です。大久保選手がペナルティエリア外から突き刺した強烈なシュートもさすがですが、ゴールの直前の動きも見逃せません。川崎らしいパスワークの中で、大久保選手はあえて足を止めて、右サイドからのパスを受けました。相手守備陣がパスへの警戒を強めている中で、自らが動かないことでスペースを空ける意図があったのです。
大久保選手は足元でボールをもらった時、相手からすると一見ボールを奪えそうな位置に置いた上でかわして、シュートに持ち込むパターンもあります。これも大久保選手らしい巧さだと言えます。
ふたりと中山雅史の共通点。
昨シーズン終了時点で佐藤は157ゴール、大久保は156ゴールとその差はわずか1点だけ。そして佐藤と並ぶ歴代1位タイは中山雅史(現アスルクラロ沼津)だ。3人は30代となって以降も安定して得点をマークし続けており、選手としてのトップフォームを長く保っている。かつてジュビロ磐田で中山らとともに黄金期を築き上げた福西氏だが、かつてのチームメートの逸話を明かしつつ、得点への意欲が衰えないことを共通点として挙げている。
ふたりと中山さんの共通点は、冒頭に話した「得点を奪うための準備」の周到さが図抜けていることにあります。それは試合だけでなく、トレーニングの時からどうすれば決定機に持ち込めるのかという想いを持ち続けているからこそ。一度ディフェンスに防がれたとしても諦めずに違う動き方をするなど、相手との駆け引きを根気強く繰り返すことができるのです。
それにプラスして周囲の味方にも“自分がボールを欲しいタイミング”を絶えず伝えています。これはジュビロでプレーしていた時の経験談ですが、中山さんはボールを出してほしいスペースに向けて指を差して、パスの出し手となる自分たちに意図を伝えていました。佐藤選手、大久保選手も中山さんと同じように、出し手とアイコンタクトを取ることでタイミングを合わせている。相手と味方、両方の意図を理解してプレーしているからこそ、偶然ではなく必然としてゴールを奪えるのです。