サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「FWの自信」を取り戻した浅野拓磨。
決勝2ゴールの伏線は“あのプレー”。
posted2016/02/09 10:30
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Takuya Sugiyama
リオデジャネイロ五輪アジア最終予選、決勝の韓国戦で反撃の狼煙となる1点目のゴールと決勝ゴールを決め、2ゴールを挙げて日本を優勝に導いたのが、浅野拓磨だ。
「最後に決められてホッとしました」
嬉しさ以上に安堵した表情を見せた浅野だが、決勝という大舞台で2ゴールが生まれたのは、実は準々決勝のイラン戦でのプレーが大きく影響していた。
「あのプレーがあったからこそ生まれたゴールだと僕も思います」
“あのプレー”とは、いったいどういうプレーだったのだろうか。
準々決勝のイラン戦、0-0という重苦しい状況がつづく中、浅野は後半37分に久保裕也に代わって途中出場した。
浅野は、ここまで、タイ戦こそスタメン出場したものの北朝鮮戦は出番なし、サウジアラビア戦では24分間の出場に終わり、結果を出せていなかった。タイ戦は得点を取れる絶好のチャンスだったが、久保が2点取り主役の座を奪われた。チームのために貢献したいという気持ちが募り、徐々にだが焦りも感じるようになっていた。
1対1でシュートを打たなかった浅野。
それだけにイラン戦、ベスト8の壁を破る大事な試合に途中でも出場できたことは、浅野にとってはラストチャンスとさえ思っていた。状況的にはこの時間、相手の運動量が少し落ちている。必ずチャンスがやってくるから自分がゴールを決めて試合を終わらせてやる。浅野は、いつも以上に強い気持ちでピッチに入った。
そして試合は延長に入り、前半6分に豊川雄太がヘディングゴールを決めた。ショックと疲労で足が止まったイランはなす術なく、さらに中島翔哉に2ゴールを決められた。3-0になって戦意を喪失し、最終ラインはバラバラになった。さらに点が入ってもおかしくはない状態になったのだ。
迎えた延長後半11分。
右サイドに抜けた浅野がドリブルで侵入し、GKと1対1になった。点差もあるし、シュートを打つコースも余裕もある。誰もが浅野のゴールを確信した瞬間だった。しかし、浅野は自らフィニッシュに行かず、中央にパスを出したのである。ゴールの確率が高い方にパスを出すという選択は、混戦状態や自分にマークがついてシュートが難しい場合に適用されるが、この時は自ら決められるシーンでシュートを放たなかったのだ。