フットボール“新語録”BACK NUMBER
中西哲生が解説する「3つのシュート」。
日本人に足りないのは、巻くキック。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2016/01/04 10:40
五郎丸のキックは、足首の角度や肩甲骨と骨盤の位置など、理にかなったものだと中西は言う。
日本人に足りないのは、巻いたキック。
プロ野球で言えば、当たり前の話だろう。投手の一球ごとにストレート、カーブ、シュート、スライダー、フォーク、チェンジアップといった分析がなされる。近年ではストレートに関して、握り方の違いにまで言及されるようになった。
シュートにおける打つ側とGKの関係は、野球における投手と打者に似ている。キックの種類の分析は、空振り=ゴールを狙ううえで欠かせないものなのだ。
「僕はW杯やユーロといったビッグトーナメントのデータ分析を個人的に続けていて、選手がどんなキックを選択したかも記録している。投手の球種と同じです。日本人に足りないのは、カーブ性の巻いたキック。力任せに打とうとして、関節が伸びてしまっているのが原因のひとつです」
関節の角度――。人体の骨格を考慮する中西の指導において、これも欠かせないキーワードだ。人体は足先から手の先までつながっており、足首の関節の角度が、体全体に影響を及ぼすのである。
五郎丸歩のキック、ポーズは理にかなっている。
「人体の構造上、足首の関節を曲げずに伸ばしたまま打とうとすると、上半身が起き上がってしまう。すなわちボールを吹かしてしまう。狙い通りに打つには、シュートの瞬間、足首の関節は曲がっていた方がいい。足首を曲げると、自ずと膝関節、股関節も曲がる。何も大げさに曲げる必要はありません。ジェラードは伸び切って蹴っているように見えるかもしれませんが、足首が少し曲がっている。それぞれの体にあった角度の大小が必ずあります」
中西は好例のひとつとして、ラグビー日本代表の五郎丸歩のキックを挙げた。
「五郎丸選手のキックの瞬間を見てください。きちんと足首が曲がっている。さらにキック前の儀式について言えば、両目の中央からやや下の位置、日本人ならお箸を持つ位置といったらわかりやすいでしょうか、そこで両手を合わせることで肩甲骨が正しい位置に入っている。さらに膝をやや曲げることで骨盤が正しい位置に入る。
手の指も忍者ポーズとして話題になりましがた、以前にも説明した通り、人差し指を伸ばして、中指・薬指・小指は軽く曲げた状態が、指先の交感神経、副交感神経の分布を考えると最も正確な動作を引き出せる。すごく理にかなった準備動作だと思います」