フットボール“新語録”BACK NUMBER
中西哲生が解説する「3つのシュート」。
日本人に足りないのは、巻くキック。
posted2016/01/04 10:40
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Getty Images
「シュートのとき、どんなキックを選択するか。野球の投手の球種と同じで、そこまで分析すべきです」
中西哲生(スポーツジャーナリスト、元プロサッカー選手)
いかにプレーを細かい要素に分解して、具体的な言葉として伝えられるか。サッカーにおける「技術の言語化」は、指導者にとって最もセンスを問われることのひとつだ。
たとえばシュートの場面で、正確に蹴ろう、落ちついて蹴ろう、力まずに打とう、と伝えても、効果はほとんどないだろう。決定力不足を解消するには、シュートの技術を正しく因数分解する必要がある。
その作業に取り組んでいる指導者のひとりが、元プロサッカー選手、スポーツジャーナリストの中西哲生だ。
「決定力不足」という言葉は分解不足。
男女の日本代表を含むプロ選手、およびアンダー年代の選手に対して「技術コーチ」をボランティアで務めており、たとえば海外にいる選手には動画を介してアドバイスを送り、オフに帰国した際にマンツーマンで動きを指導する。すでに本コラムでも2回に渡って、“中西塾”の取り組みを紹介してきた。
ドイツサッカー協会は約10年前から個人技術の大切さに気がつき、「技術コーチ」という独立した専門職を作って活用してきた。中西は日本サッカー界におけるその先駆けと言える。
たとえば中西は、決定力不足という言葉を好きではないという。具体的な要素に分解できていないからだ。
決定力の正体を明かすには、まずはシュートにおけるキックの選択を、大きく3つに分けることが必要だと考えている。
「キーパーの手の届かないコースを狙ったシュート回転とカーブ回転のキック、キーパーのいない場所を射抜くスピード重視のキック、キーパーのセービングのタイミングを外すキック、この3つです。GKと対峙したときに、3つの中からどれを選ぶか。この発想を持つだけで、シュート時の意識がすごく変わります」