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32年ぶり五輪出場の裏に異端の戦術。
水球日本代表が捨てた「常識と安定」。
text by
田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph byKyodo News
posted2015/12/30 12:00
イケメン選手が話題だが、見て楽しいボールゲームだけに、ブレイクの可能性は十分にある。
32年ぶりの快挙は、異端の戦術の果てに。
『32年ぶりの五輪出場』という目標のために、海外のプロリーグでプレーする選手も、職に就かず競技に集中する選手も、学生の若手選手も全員が一緒に、体力的にも精神的にも厳しい完全拘束合宿を乗り切った。4年前に五輪出場を逃した悔しさを抱え、海外で力を磨き続けてきた志水祐介キャプテンは、この合宿をこう振り返る。
「チームでこれだけ長く合宿することもはじめてでしたから、精神的にも厳しかったですし、連日ハードなトレーニングばかりで身体も限界でした。でも、それをやり遂げたという達成感もあって、自信を強く持てました。本当の意味でチームがひとつになったと感じています」
メンタル、フィジカルの成長はもちろんのこと、再三再四チームで話し合って『超攻撃型ディフェンス』を昇華させて作り上げた日本独自の“パスライン・ディフェンス”という戦略も完成させて、万全の準備を整えたからこそ、日本の水球界は32年という膠着していた重い扉をこじ開けられたのである。
次、水球日本代表が挑むのは夢である五輪の舞台。「今はゆっくり休んでほしい。来年、1月からまた新たな気持ちで始動します」と、選手たちにねぎらいの言葉をかけた大本ヘッドコーチ。
「日本は今まで五輪で1勝しかしたことがありませんから、当然その上を目指します。東京五輪に向けた良い経験とするためにも、結果を残したい」
すでに五輪出場を決めているブラジル・セルビア・クロアチア・ギリシャ・アメリカの5カ国に次いで出場権を勝ち取った極東の小さな島国が、屈強な欧米選手たちを“パスライン・ディフェンス”で攪乱させる姿を、リオデジャネイロの地で早く見たいという気持ちと期待は高まるばかりだ。