プロ野球亭日乗BACK NUMBER
プレミア12が露わにした構造的欠陥。
代表チームを評価する組織が、ない!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2015/12/26 10:50
順調にグループリーグを勝ち上がった侍ジャパンだったが、準決勝で韓国に逆転負け。小久保監督は「すべては自分の責任」と語った。
日本代表の全世代チームを評価する部署が?
監督を決めたのは12球団の実行委員会で、それを承認したのはオーナー会議だった。ただ、今回の敗北で監督の進退論が噴出したことで、改めて常設化されたチームと監督を評価する専門組織がNPBにはないことがクローズアップされることとなった。
事業化のために、株式会社NPBエンタープライズという組織は出来上がった。ところが侍ジャパンというコンテンツそのものを管理する組織がない。結果として一度決めた監督は、チーム強化から選手の選任まですべてを委ねられ、結果に対しては自分自身で評価し、進退を決断しなければならないという矛盾を抱えている現実がある。組織として、日本代表の監督やチームを評価できないという欠陥が露呈したわけである。
そうした不備がクローズアップされた敗戦――まさに準決勝で韓国に敗れたあの1敗は、侍ジャパンに欠けていたもの(というか日本球界の欠陥)を改めて浮き彫りにした敗北だった。
しかし、欠けていたものが明確になったことで、次への一歩を踏み出す機会になったのは収穫だった。球界には2016年4月にプロアマ協議会(仮称)というプロとアマチュア両球界の最高責任者が集まり意思決定をする機関を発足させる計画がある。その中で日本代表に関しても、全世代のチームの監督候補を決定・評価し、チーム強化を行う部署を設ける案も出ているという。
遅きに失した感は拭えない。ただあの敗北から、これで侍ジャパンが事業面だけでなくチーム運営面でも組織的にようやく形をなすことになった。それも成果と言えるだろう。
そして小久保監督も、変わる必要がある。
そしてあの敗北が明確にした最後の問題が、小久保監督の進退だった。
侍ジャパンにとっての当面の目標が、2017年に予定される第4回のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での世界一奪回であることはいうまでもない。その最終目標に向かって、来年3月には台湾を招いての強化試合が計画されている。本番のちょうど1年前となるその強化試合が、プレミア12で湧き上がった小久保監督の進退論に最終決着をつけるリミットとなるわけだ。
もちろん問われるのは、小久保監督の変化である。プレミア12で見せたチーム運営がどう変わるのか。力任せに勝つだけではなく、絶対に1点を取りにいく戦い方やシチュエーションでの細かな采配、継投が、あの敗北を糧にどう進化しているのか。小久保監督は、この強化試合でただ勝つだけではなく、WBCで勝つ野球をどう見せることができるかがテーマとなるはずである。
1年後には本番が待っている。
そこで勝てる野球、勝てる采配を見せられるか。3月の強化試合は、小久保監督で行くのか、それとも別の監督にチームを委ねるのか。その決断のまさにギリギリのタイムリミットとなるはずである。