プロ野球亭日乗BACK NUMBER
プレミア12が露わにした構造的欠陥。
代表チームを評価する組織が、ない!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2015/12/26 10:50
順調にグループリーグを勝ち上がった侍ジャパンだったが、準決勝で韓国に逆転負け。小久保監督は「すべては自分の責任」と語った。
「なんで大谷くんを代えたのかしら!」
2015年はワールドカップでの日本代表の活躍で、ラグビーが日本人の共通言語となった年だった。そしてラグビーW杯が終わった直後に、今度はプレミア12が高い視聴率を記録した。この間、まだまだ共通言語とまでは至らなかったかもしれないが、普段は野球にあまり興味を示さない人々にも、侍ジャパンの話題が多少なりとも浸透していった事実は確かにあったわけである。
そういう中で迎えた準決勝で、侍ジャパンは韓国に敗れた。3-0から土壇場の9回に逆転を許して、そのまま苦杯を舐めた。
好投の大谷を7回で交代させて則本昂大投手(楽天)にスイッチした小久保裕紀監督の采配には批判が集まった。
「なんで大谷くんを代えたのかしら!」
普段は野球をあまり観ないような女性ファンからも、こんな怒りの声があがったと聞く。そこから9回の則本の続投、ピンチを招いてからの継投策、攻撃面での詰めの甘さ等々の様々な敗因分析が話題となり、監督の進退論まで論議は発展した。ただ、そうして日本人の日常の中で野球が話題になったことは、敗れてもプレミア12が残した大きな収穫だったわけである。
敗北が、組織の不備を改善する機会をくれた。
そして、あの1敗がもたらした二つ目の成果がある。それは敗れることで、逆に組織的な不備が明らかになったことだった。
もちろん侍ジャパンにとって優勝が一番の結末だったかもしれない。ただ、勝ってすべてが大団円で終わるよりも、準決勝で敗れたこと、あの1敗を喫したことは、これからのためには、むしろプラスに転化できるものだったと言えるはずなのである。
クローズアップされたのは小久保バッシングに対して、日本野球機構(NPB)はいったい何ができたのかということだ。
結論を言えば、ただただ指をくわえて見ているだけだったというのが真実である。
それもそのはずで、NPBの中には、侍ジャパンの監督とチームをきちっと評価する組織がないのだ。