プロ野球亭日乗BACK NUMBER
プレミア12が露わにした構造的欠陥。
代表チームを評価する組織が、ない!
posted2015/12/26 10:50
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Nanae Suzuki
あの1敗は、実はこれからの侍ジャパンの運命を決める分水嶺となる敗戦だったかもしれない。
11月に行われた野球の新しい国際大会「プレミア12」は、戦前の予想をはるかに超える大きなインパクトを日本の野球に与えるものだった。
大会が始まる前はメジャーリーガーの不参加からネガティブな情報が錯綜して、大会そのものの価値を問う声も多かった。
ところが11月8日に札幌で行われた日本対韓国の開幕戦、大谷翔平投手(日本ハム)がMAX161キロを叩き出す本気のピッチングでファンの心を揺さぶった。その結果、テレビ中継は平均19.0%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)という、予想をはるかに超える高い数字を叩き出した。大谷をはじめとする選手たちの本気と、多くの人々がその戦いに注目しているという結果(視聴率)が相乗効果を生んで、その後の試合の高視聴率へと繋がっていったわけである。
日本人の日常から野球が失われて久しい。
「野球を日本人の共通言語に戻したい」
こう語っていたのは、侍ジャパンの事業運営を行っている株式会社NPBエンタープライズの今村司社長である。
かつて野球は日本人の日常の中にあった。
朝の挨拶代わりに、昨日の野球の話題が交わされる。それが当たり前だった時代が日本では長くあった。しかしそうした日常から野球が忘れられて、どれくらいの時が流れていったのだろうか。
確かに今でも球場は活況を呈している。
12球団の地元では、贔屓のチームを応援する熱心なファンの盛り上がりは以前と変わらないか、ときにはそれを上回る熱を放つ。ただ、その一方で日本人の誰もが野球を語れた時代、誰もの言葉の中に野球があった時代は終わり、興味のない人々には野球の話題はまったく無関心なものとなった。