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スカウト予算はユベントスの5倍以上!
育成王国ウディネーゼの異端戦略。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2015/12/02 10:40

スカウト予算はユベントスの5倍以上!育成王国ウディネーゼの異端戦略。<Number Web> photograph by AFLO

世代別の代表でもプレーし、既にプレミアやリーガのクラブも狙っているといわれるスクフェット。

育てて売った資金で、スペインや英国のクラブを買収。

 変革はもちろん、いきなり地元出身者一辺倒へ、というわけではない。従来の辺境国路線も継続させながら、年齢によってスカウト対象を多角化していく、という考え方だ。

 ウディネーゼのトップチームには、久しく地元出身選手がいなかった。だが、昨年2月には17歳でセリエAデビューを果たしたウディネ市内出身の大型GKスクフェット(現在はセリエB・コモへレンタル中)が話題になり、現在は極上生ハムの産地として名高いサン・ダニエレ町出身のMFポンティッソが一軍定着を狙う。彼もまた、クラブを巣立っていった先輩たちのようにビッグクラブへ移籍する日を夢見る。

 これまでの移籍市場で、サンチェスやハンダノビッチが残していった莫大な移籍金は、何に使われたのだろう。

 クラブを経営するオーナー一族であるポッツォ家が図ったのは、“領土拡大”だ。

 '09年夏に買収したグラナダCF(スペイン)に続いて、'12年夏にはワトフォードFC(イングランド)も手に入れた彼らは、伊・西・英にまたがる3クラブの連結経営を実現した。イタリア北東部の地方クラブは、今や“ウディネーゼ育成連合王国”とでも呼ぶべき特異なクラブ共同体だ。

 保有選手の特性や国ごとの事情に合わせて、3クラブ間での戦力シャッフルを可能にする彼らが、移籍市場で持つアドバンテージは計り知れない。

 ウディネーゼへ入団してくる若手選手たちにとっても、ウディネの地でプレーすることは、イタリア国内の強豪へのステップアップのみならず、リーガやプレミアリーグへ直結する玄関口へ立つことを意味している。

トップチームは低調でも、基盤は盤石だ。

 今季、コラントゥオノ新監督に率いられたトップチームは、開幕から低空飛行が続いた。本格的な冬の到来を前に、ようやく降格圏から距離を置くことに成功したが、38歳の主将ディナターレにもいよいよ引退の色が濃くなってきた。残留までには、まだまだひと波乱もふた波乱もありそうな気配だ。

 ただし、育成王国であるウディネーゼの理念は揺るがない。若手選手の発掘場が、外国から地元のフリウリ地方へ移り変わっても、スカウトたちの目利きの確かさがある限り、王国の基盤は盤石だろう。

 この12月には、ホームスタジアム「フリウリ」の全面改装工事がようやく完了する。総工費5千万ユーロをかけ、スポルティング・リスボンの本拠地ジョセ・アルバラーデに範をとった大規模リスタイリングによって、「フリウリ」はカラフルに生まれ変わる。

 北の育成王国は、今年も冬の寒風に堪えながら、未来ある若者たちとともに、その春を祝うにちがいない。

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