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職業、トレイルランナー。
奥宮俊祐/小川壮太/鏑木毅
text by
礒村真介Isomura Shinsuke
photograph bySho Fujimaki
posted2015/11/30 10:00
日本山岳耐久レースで長年活躍している奥宮俊祐は今年プロとして独立。その「食べる」道とは?
「自分はなんてラッキーなんだ」
実は奥宮は学生時代に箱根路を目指した陸上競技選手、ロードランナーだった。
「OBや同窓生に会う機会があると『お前まだ走ってんのかよ、いいよなあ』と、半ばあきれ顔で羨ましがられます。同年代で私より速いランナー、実業団に進んだランナーもいましたが、未だに走り続けているのは自分だけ。ときどき、自分はなんてラッキーなんだ、運がいいんだ、ってしみじみと思います。
懐事情ですか? 今のところ、経理担当の妻からは『意外と頑張ってるね』と言ってもらえています。まぁ、毎日が必死ですよ!」
小学校教員から37歳でプロへ転向。
奥宮と同じく、この春にプロへの道を選んだのが小川壮太だ。彼も3児の父。そして前職は小学校教員と、安定した生涯収入が見込めていた立場だ。37歳当時での決断は、選手としては遅すぎるようにも思えるのだが……。
「それが、肉体的に下降している感覚は全然ないんですよ。むしろどんどん上がってきているイメージ。その証拠に今シーズンは各レースで自己記録を更新してきてますし、プロになってからの練習にも手応えがあります」
確かに、ここ数年の小川は年を追うごとにパフォーマンスを上げてきている。今シーズンは日本のトップランナーが集結した御嶽山のチャリティレースでも優勝した。ロングやウルトラトレイルの舞台では、40歳前後にピークを迎えるアスリートは少しも珍しくない。
「ショート、ミドル、ロングではそれなりの成績を残せてきたので、次は160kmのウルトラで結果を出したい。そのためには海外の本場でのレース慣れも必要だと感じていて、小学校の先生のままでは難しかったんです。
ウルトラで納得のできるリザルトを手にするまで3年はかかると考えていますが、世界中でこのカテゴリーが盛り上がっていますし、アスリートとしてやりがいがありますから。
日本でもUTMFという国際的ウルトラレースの舞台が整いました。そこで実績を残せばメーカーからスポンサードを受けたり、子どもへの普及活動を仕事に結びつけられたりと、食べていく道が広がる。今、この業界ではプロとして生計を立てるさまざまな可能性が芽生えつつあると感じています」
また、トレランブーム“前夜”から道なき道を切り開いてきた第一人者・鏑木毅にも話を聞いた。独立時には何百万もの借金を抱えたという鏑木はどうやって道を切り拓いてきたのか?
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