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職業、トレイルランナー。
奥宮俊祐/小川壮太/鏑木毅
posted2015/11/30 10:00
text by
礒村真介Isomura Shinsuke
photograph by
Sho Fujimaki
ここ2、3年、確かなスピードで広がりを見せるトレイルランニングシーン。その拡大に呼応するように、今、ポツリポツリとではあるが「プロのトレイルランナー」と呼べる人物が登場しつつある。「プロ」と表現するのが大げさであるならば、「トレイルランニングで食べている」と言い替えてもいい。陸上長距離やマラソンとはちょっと違う、職業=トレイルランナー。彼らはいったいどういう存在で、この業界はどんな世界なのか。
かくいう私もトレイルランニングを半ば専門とするライターとして1年半前に独立し、活動している。ゆえに業界の「懐」事情には興味津々の身。年度後半のシーズン入り前、夏の終わりに連続インタビューを敢行した。
自衛隊、パン職人、IT企業、そしてプロへ。
「週末に行われるプロデュースレースの準備のため、今日の夕方から広島へ飛びます。経費節約のためにLCCなんですけれど」
そうはにかみながら1人目のプロトレイルランナーが日暮里駅前に現れた。手には大きなトロリーケースのハンドルが握られている。
奥宮俊祐、36歳。日本で一番有名なレース「日本山岳耐久レース(通称ハセツネカップ)」での長年にわたる活躍で知られ、ミスター・ハセツネと称される存在。最近は海外レースでも好成績を収めている。そしてこの春、勤務先のIT系企業を円満退社し、自身が代表を務めるFunTrailsを立ち上げた。
「会社員時代の社長には本当に感謝しています。日中は通常の業務がありましたが、定時後や週末、長期休暇の手ほどきなどでトレイルランに集中できる環境を整えていただき、一般のサラリーマンランナーとは比べ物にならない恵まれた4年半でした。この社長とも実はレースの打ち上げで知り合ったんです」
奥宮は大学卒業後パン職人の経験を経て自衛隊に入隊し、そこでトレイルランニングに出会う。その後よりよい競技環境を求め前述のIT系企業へと転職し、活躍を続けていた。