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U-18のエースが、最後の選手権切符。
桐光学園・小川航基の憧れるFWは?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySatoshi Shigeno
posted2015/11/17 10:40
小川は2年前の高校選手権にも当時1年生ながら出場した。その経験はチームにとって大きい。
ボールの要求も積極的にすることで得点力もアップ。
就任当初こそ「自分はプレーで引っ張る」と掲げていたが、実際にトレーニングに取り組んでいるうちに、少しずつ心境の変化があったという。
チームが日本一になるためには、どういった声掛けをしていけばいいのか。
一つひとつの行動に、自然とリーダーシップが備わった。
例えば、アウェーで行なわれた試合での敗戦後、1~2時間かけて選手たちでミーティングを行なうこともあった。また部員の授業態度など、ピッチ外の部分にも目を配っていたという。
「『全員で責任を持ってやろう』ということは言ってきたところです」
自らが積極的に発信する姿勢。それはピッチ内でのプレーにも生きている。
例えば、課題としたクロスに飛び込むオフザボールでの駆け引き。もしそこでパサーとのタイミングが合わなければ“このスペースに欲しかったんだ!”と、ジェスチャーを交えて味方にアピールする。
声を出すことによって、思いを伝える。それがさらなる得点力アップをもたらした。
代表に行くことで生まれる周囲とのギャップ。
そんな小川にとって不安だったのは、主将としての役回り以上に、主将である自分自身が不在になることで生まれる“周囲とのギャップ”だったのかもしれない。
世代別代表に選ばれる高校生が抱える難しさ、それはチームが公式戦に臨む中でも代表に行かざるを得ないところだ。
これがJリーグであれば、ナビスコカップや天皇杯といったカップ戦が代表招集期間と重なり、リーグ戦で不在になることはそうそうない。しかし高校生世代だと、年間を通じて行なわれる高円宮杯プレミアリーグや各地域のプリンスリーグなどを欠場するケースも出てくる。
その痛手は戦力的な部分だけではない。“チームがどのように戦ったのか”を共有できないのは、招集された選手にとっても、チームにとっても悩みの種となる。ましてや、小川のように主将を任された選手であれば、その葛藤はさらに増すことは想像に難くない。
それでも――。