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U-18のエースが、最後の選手権切符。
桐光学園・小川航基の憧れるFWは?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySatoshi Shigeno
posted2015/11/17 10:40
小川は2年前の高校選手権にも当時1年生ながら出場した。その経験はチームにとって大きい。
OBの中村俊輔を「追い抜いていく」。
試合後、小川はインタビューでゴールシーンを振り返ったが、そこには満足感はなかった。
「クロスに対する入り方は自分の課題でもあったので、タイミングよく合わせられたのは良かったと思います。ただ、自分は『毎試合、点を決めなければならない』という意識でプレーしています。準決勝では得点を奪えず不甲斐ないプレーをしてしまいましたし、今日の2点で決して満足できるわけではないです」
これ以外にも、小川は印象的なコメントを残している。
試合前に同校OBである中村俊輔(横浜F・マリノス)が激励を送ったことについて、問われた際のこと。
「中村俊輔選手は誰が見ても素晴らしいプレーヤーで、日本代表でも10番を背負ったプレーヤーでとても尊敬しています」と話した後、このように続けた。
「でもそういった偉大な先輩を、自分が追い抜いていかないといけないと思っています」
活字にすると刺激的な表現である。ただ本人は、意を決したような表情で発言していて、決して“ビッグマウス”というタイプではない。その語り口を見ていると、むしろ思慮深い好青年の印象を受ける。
話すのが得意でなかった小川が、キャプテン就任。
言葉で表現していくことの大切さ。小川にとってそれに気づくきっかけとなったのが、昨夏のキャプテン就任だった。
「自分の苦手なところだったんです」
照れくさそうな表情を浮かべた小川は、当時をこう回顧した。
「(鈴木勝大)監督に指名された時は正直、『いやいやいや……』と思いました。下級生の頃は人間的にまだまだ未熟で、“自分のプレーさえよければ”という気持ちが少しあったことは確かなので」
そんな小川だが、自分の性格と向き合いつつ、主将としての自覚が芽生えていった。