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四球の意味が違ったSBとヤクルト。
なぜ攝津、館山の投球に差が出た?

posted2015/10/29 12:33

 
四球の意味が違ったSBとヤクルト。なぜ攝津、館山の投球に差が出た?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

3度目のトミー・ジョン手術から今年復帰した館山昌平。シーズン中は安定した投球を見せていたが……。

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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Hideki Sugiyama

 崖っぷちに追いこまれたヤクルト。苦戦の原因は、やはり自慢の打線が不発に終わっていることだが、もう一つ、挙げるとすれば先発陣が予想以上に早い回で崩れていることにもある。

 第1戦の石川雅規が4回、2戦目の小川泰弘も4回3分の2、第3戦の杉浦稔大が4回3分の1で、第4戦の館山昌平は3回で5点を失ってマウンドを去った。

 日本シリーズに出場してくるチームには、必ずエースと呼べる投手がいるはずだ。そういう頼りになる柱の投手がいて、その投手力が原動力となって長いペナントレースを勝ち抜いてきていることが多い。だから、シリーズに出てきたチームで開幕から4戦続けて先発投手がいずれも5回も持たずに降板したケースは、1956年の西鉄、'82年の中日とわずかに2チームしかない。今年のヤクルトが、長いシリーズ史上3チーム目の不名誉記録を達成したチームということになるわけだ。

ブルペンが充実していると、逆算が大事になる。

「館山がゲームを作れなかったのが原因ですね。それに尽きる」

 試合後のヤクルト・真中満監督は報道陣に囲まれると、こう第一声を発した。

 昨日も書いたが、このシリーズは逆算のシリーズである。

 ヤクルトもソフトバンクもお互いに豊富な中継ぎ、リリーフ陣を持ち、その戦力が機能している。だからこそ序盤のリード、先取点というのが大事なカギとなるのだ。競り合っての終盤勝負ではなく、先発投手がどこまで序盤を持ちこたえて打線が早くから援護できるかが、今年のシリーズの一番のポイントなのである。

 だが、この日の館山はベテランらしからぬピッチングであっさりとソフトバンクに先制点を許し、主導権を渡してしまった。

 館山の最大の持ち味は、状況によって大胆さと繊細さを出し入れできる狡猾さにあると思う。

 初回、先頭打者の福田秀平にいきなり四球を許した。その瞬間に、以前に館山が語っていたこんな話を思い出した。

「序盤は先に点をやりたくないので、フォアボールを出しても甘い球を投げないように気をつけている」

【次ページ】 四球の後に粘れるか、という分岐点。

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館山昌平
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