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過大評価、過小評価を経て等身大へ。
石川遼「根拠のない自信も時に必要」。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2015/10/26 12:05
本人が「守りに入ってしまった」と悔やんだ最終日17番ホール。石川の攻める姿は、やはり魅力的だ。
スコアにこだわらないことでスコアが伸びる。
プロゴルファーたるもの、結果がすべてではある。だが、スコアにこだわらないぞと決めたおかげで伸び伸びとドライバーを振ることができ、その結果、思いきりが良くなってショットが曲がらなくなるのなら、「スコアにこだわらない」ことのアドバンテージはある。
振っても曲がらない。そう信じられるからこそ、もっと振り切ることができ、もっと飛ぶ。ドライバーがいいと思えることで、アイアンもウエッジも相乗効果で良くなり、バーディーチャンスに付けられる確率も高まって、結果的にスコアが伸びるとなれば、それほどいいことはない。
そんな「いいことづくし」に近い状態だったのが、7バーディー、1ボギーの快心のプレーで5位発進した今年の初日だった。2日目、3日目はダブルボギーやトリプルボギーが響き、1オーバーのラウンドになった。最終日は序盤に3つスコアを伸ばしながら、終盤17番のトリプルボギーでさらに後退し、50位に終わった。
だが3日間とも、1ホールの大叩きを除けば、それ以外のプレーぶりには昨年、一昨年より躍動感が溢れていた。大きな爆発力がどこかに潜んでいるようにさえ感じられ、何かのスイッチが1つ入れば、目を見張るような快進撃が起こりそうな、そんな力がこの開幕2試合で見て取れた。
過大評価から一転、過小評価に陥っていた。
逃げずに攻める――今季、石川が目指し始めたことは、昔への逆戻りに見えて逆戻りではなく、それもまた進化なのだろう。
そう思って尋ねてみると、石川は大きく頷いた。
「プロになりたての高校生の恐いもの知らずのころ、日本で賞金王になったときも、僕は根拠のない自信でやっていた。実際の技術より自分は上手いと思っていたし、自信もあって、自分を過大評価していた」
それが、両サイドにOBがあっても構わずドライバーを振り回していた時代の石川だった。
「でもアメリカに来て、実は自分は大したことないんだなと思って、技術に対する自信もなくなったのかもしれない。ピンを狙っていける技術があっても狙わなかった。ミスしたらこうだから、こっちに打つのはやめようって、そんなふうに思った時期は自分を過小評価していた」
それが、一昨年、昨年の石川だった。2位になっても自分を過小評価していたというのは、達成感や満足感においては、ちょっぴり悲しい状態だ。が、その姿勢を大きく変えるきっかけになったのが、日本で優勝したANAオープンに挑んだときだった。