球道雑記BACK NUMBER
驚異的な順応性と伸びしろを持つ右腕。
ドラフト期待のNTT東日本・横山弘樹。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/10/21 10:50
昨年の都市対抗野球では新人賞に当たる若獅子賞を受賞。まだ大きな伸びしろを秘めている。
自分の眠っている引き出しを見つける能力。
横山の最大の武器は前述したチェンジアップもそうだが、多彩な変化球を持ち、どの球種からもカウントを奪え、決め球にもできる器用さと言ってもいい。それでいて教わったことを、即、自分の形にして取り入れることができる順応性も高く、これについては首脳陣の評価も高い。
「変化球投手ではないんですけど、どちらかというとバランス型。力で押して、落としてというピッチングではないです。あと、間の取り方が上手なのでそこにセンスを感じます。たとえばランナーを置いてから一球投げるのでも、牽制球一つでも、ボールを少し長めに持ってみたりするのでも、考えて野球をやってきたんだなと一目で分かりますし、それは昨日、一昨日の話じゃないと思うんです。
順応性が高いというのは、自分の眠っていた引き出しがどこかにあって、指導者がこういうこと言っているんだなと即座に理解することができる能力じゃないかなと自分は思いますね」
実は今もピッチングフォームは固まっていない。
NTT東日本で現監督を務める飯塚智弘もその辺りは高く評価している。だからこそ投手コーチの安田も迷う。このままここに置いて、もう1年じっくり育てるか、プロに行ってさらにもう一皮剥けるのか、安田自身も彼の順応力、そして成長スピードの速さに驚かされているのだ。
「素直だし、順応性がある。それは確かです。それを受け入れてやるだけだったら誰でもできるんです。ロボットのように。でもそれでは崩れるのも早いんです。自分の感性感覚がないから自分が今、こうなっている、ああなっているが分からない。コーチはこう言っているけど、自分に置き換えるとここをこうすべきだとか、考えられない投手が多い。言われ待ちとか指示待ちとか言われたことだけやるとかですよね。
でも横山は自分の感覚で取り入れてできるので、そこが彼のいいところなんですよ。今も正直言うとピッチングフォームは固まっていません。定期的にフォームも変わっちゃうし……。でも、それは彼が今の状態でこうやって投げるべきだとか、今はこの段階だからこうしようとか手探りでやっている感じなので。設定する目標に対して、今はこうすると、今はここはできないからこの感覚で投げちゃえと、それでも抑えちゃうんだから凄いは凄いです。そこの適応力は素晴らしいなと思いますね」