球道雑記BACK NUMBER
驚異的な順応性と伸びしろを持つ右腕。
ドラフト期待のNTT東日本・横山弘樹。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/10/21 10:50
昨年の都市対抗野球では新人賞に当たる若獅子賞を受賞。まだ大きな伸びしろを秘めている。
さらなるステップアップを図るために。
そうした指導者たちの暖かい気持ちを横山はもちろん好意として受け取っている。
「チームのためとか、誰かのためにと思った方が自分は頑張れると思うんです。大学3年までは100%自分のために野球をやっていたんですけど、そこから変われたのは安田さんとの出会いや、黒田さんに世話になったことや、上田さんが自分を活かしてくれたりとか、そうした世話になっている周りの人たちのために半端なことはできないと思う気持ちです。そうした責任感を感じながら、マウンドに立った方が自分のやるべきことができると思っていますし、そういうのをこの社会人に来た1、2年で気付いた気がしますね」
現在も横山は、さらなるステップアップを図るために、安田の教えを忠実に守り、周囲への感謝を噛みしめながら、焦らず自分のペースでしっかりと歩を進めている。
たとえば得意のチェンジアップを活かすため、ピッチングフォームに溜めを作り、奥行きを出すとか、直球がプロで5年、10年、15年と通用するように、球速ではなく球持ちにこだわってみたりとか。安田のいう「未完成」は彼の完成形がまだまだ先にあり、その素質を見込んでいるからこそだ。
「プライドを持って行けよ」
10月22日、運命のドラフトはすぐ目の前にまで来ているが、今の彼の視線の先に見えているものは、10月31日に京セラドーム大阪で初戦を迎える社会人野球日本選手権で最高の結果を残して、これまでの恩に応えることだ。
安田は言う。
「だから(プロ入りの)チャンスがあるんだったら行けばとは話はします。ただプライドを持って行けよと。(横山は)昨年より結果は出ていませんけど、それでもゲームは作っていますし、都市対抗の予選は負けていますけど彼のせいで負けたとかじゃないんで、でもNTTのエースとしてやった以上は何位でもいいなんて言うもんじゃないと。これだけ大きな会社で社長をはじめ多くの方にサポートしてもらってやれているんだから何位でもいいですという考えで行くのは、反対だって言いました。本当に評価をされて行くんだったら安売りしていくんじゃないと」
横山もその言葉をしっかりと受け止めていた。