球道雑記BACK NUMBER
驚異的な順応性と伸びしろを持つ右腕。
ドラフト期待のNTT東日本・横山弘樹。
posted2015/10/21 10:50
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
NIKKAN SPORTS
「プロのスカウトの方にも言っていますけど、彼の完成形はまだまだ先です。フォームもまだまだだし、まだ目指すところまで全然ですよと。ただ、その分伸びしろはあると……」
NTT東日本でピッチングコーチを務める安田武一は、今秋のプロ野球ドラフト会議でプロ入りを目指す教え子について訊かれると、複雑な胸の内を明かした。昨年の都市対抗野球で若獅子賞を受賞した入社2年目の横山弘樹のことだ。
「昔だったら(社会人の選手は)プロに行って、俺だったらこれくらいやれるとか思って、みんな行ったと思うんですけど、今はまず『行きたい』が先に来て、行ってからが勝負みたいになっています。でも、それは違うなあと最近思うんです」
社会人野球で選手として14年、コーチとして14年携わってきた男の言葉だった。断りを入れておくと、安田は横山のプロ入りについて反対をしているのではけっしてない。プロ入りしたことで結果を焦り、己のやるべきことを見失い、せっかくの才能を伸ばせないまま終わりはしないかという親心がそう言わせているのだ。
時計は3年前、横山が大学3年のときまで遡る。
最初はひどい投げ方だった。
横山は、NTT東日本の練習会に参加。安田と会うのはこの日が初めてだった。
「最初見たときは、ひどい投げ方をしているなあと思いましたね。体が大きいのにサイドスローみたいな投げ方で、しかも体が横振りで開いている。体を振って投げるみたいな感じですね。それが第一印象でした」
セレクションの意味合いも込めたこの練習会で安田が出した最初の答えは「社会人でやっていくのは難しい」という厳しいものだった。
「ただね、(桐蔭横浜)大学さんからも最初からいじっていいですと言われていたんです。だからなんでそんなに横振りなのってところから話しましたね。肩を痛めたとか、肘が悪いからとか、こうやって教えられたからとか、それぞれ過程があると思うんです。その過程を僕は知らなかったので、うちで獲るんだったらこうするよね、ああするよねって話しました。もう少し上から投げられないのか、後ろに重心をためてオーバースローというか、縦振りができないのとか、ネットピッチングをしたり、動きづくりですよね」