球道雑記BACK NUMBER
驚異的な順応性と伸びしろを持つ右腕。
ドラフト期待のNTT東日本・横山弘樹。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/10/21 10:50
昨年の都市対抗野球では新人賞に当たる若獅子賞を受賞。まだ大きな伸びしろを秘めている。
注目新人を、決して特別待遇では迎えなかった。
少しずつその才能を開花させた横山は、公式戦でも結果を残し始める。
大学4年の春に優勝がかかった最終戦で登板し、リーグ戦初勝利を飾ると、秋には6試合48回2/3を投げて防御率0.92の成績をあげて最優秀選手に輝く。この頃から187cmと上背もある大型右腕として徐々に注目を集め始めるが、NTT東日本に入社後、安田はけっして横山を特別待遇で迎えることはしなかった。
「鳴り物入りで入って来ても社会人の打者は5月になれば慣れてくるし、そんな甘いものじゃないです。3~4月のオープン戦で結果を残していても、都市対抗の予選前にはみんなバテてくるし、大学生でいくらリーグ戦を経験しても1年間ずっと投げるってことは経験していないし、ブルペンの投球も社会人だと遊びじゃなくなるので、大学生だとそこまで投げられる体力がまだ備わっていないんですね。
ピッチングの意識が低いからただブルペンで投げているだけとか、50球投げた、60球投げたの球数だけなんで……。(ブルペンでも)一球、一球を集中して投げているとどうしても疲れてくる。だから予選まで持たないピッチャーが多いんです。そういう意味でも『9人中9番目だぞ』と、そんな甘いものじゃないよとどのピッチャーでもそうした意識付けはします」
決め球を活かす配球の発見。
横山もそのことは理解していた。NTT東日本に入社後、社会人野球のマウンドに立つ心構えをベテランの黒田信弘から教わり、配球面については捕手の上田佑介からアドバイスを受けた。そうしたなかで新たな発見もあった。
「(上田さんは)この球はブルペンだったらナイスボールかもしれないけど、試合では使えるのって言い方をするんです。これを活かすには前の球次第だよねって。一人の打者を最後はこれで抑えたいと考えたとしたら、そこまでの過程を逆算して配球を組み立てるような。たとえば試合の終盤でピンチを迎えて中軸が来たときのために、わざと1打席目は気持ちよく打たせたり伏線を張るんです。
ここは打たれていい、ここは打たせちゃダメとか、最初の打席でこういう攻め方をしたから3打席目はここに投げても大丈夫だよとか、そういうのを試合のなかで教えてくれるんです。だから試合で失敗したことも、この失敗はこういう意味だぞと、失敗を失敗で終わらせない考え方というか、次に活かせるんだ、全て繋がっているんだよと教えてくれるので、今は投げていて楽しいですし、自分をマウンドで成長させてくれたと思うんです」