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ロッシとロレンソ、14点差で日本へ。
またしても「接触」は起こるのか。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2015/10/05 10:30
同じチームで優勝を争うロッシとロレンソの仲は一触即発。辻幸一ヤマハMS開発部長は複雑な心境で日本GPを見守ることになりそうだ。
ロレンソが逃げ、ロッシが追う展開に。
ロッシもロレンソも異口同音に「これから一戦一戦が勝負」と語っているだけに、手に汗を握る戦いが見られそうだ。
もてぎの勝負どころは、ハードブレーキングポイントが要求される5カ所。そのポイントでの接触、コースアウト、転倒などなど、いろいろなシチュエーションを想像するだけで胸が痛くなってしまう。
しかも14ポイント差となれば、追う側も追われる側も守るだけのアドバンテージはなく、当然ミスは許されない。ふたりに共通しているのは、ただただ先着しなければいけないという強い思いだけである。
先行逃げ切りタイプのロレンソは、おそらくもてぎでも必死に逃げるだろう。
一方のロッシはこれまでの戦いぶりからして、ロレンソに逃げられたらどうにもならないので全力で追走することになるはずだ。
その先はどうなるか。
想像されるのは、ロレンソがあっけなく逃げ切ってしまうケースと、追い上げてきたロッシに抜かれてズルズルと後退していくケースだ。
このいずれかになれば大きな事件が起きる可能性は少ないが、逃げるロレンソにロッシが終盤になって追いつく展開になれば、最終ラップの勝負所でふたりが接触することになるだろう、というのが僕の読みである。
過去には“待ち伏せ攻撃”という作戦も……。
ロッシはこれまで、ここぞというときに数多くの接近戦を演じてきた。一方のロレンソも、'13年のシーズン終盤戦に逆転チャンピオンへ一縷の望みを託し、タイトル王手のマルケスに対して接触も辞さない激しい走りをしたことがある。
そのひとつが'13年の日本GPで、先行するロレンソに対してマルケスは一度も勝負することなく2位でフィニッシュした。
マルケスも勝負したかったが、接触したくなかったから勝負できなかったという。
事実、タイトル決定戦となった2週間後の最終戦バレンシアGPで、先行したロレンソがペースを落としマルケスが抜いて来るのを“待ち伏せ攻撃する”という、とんでもない作戦を演じたことは記憶に新しい。