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返り咲き目前、ロッシの意外な一言。
9度の王者経験者は、何を語ったか。
posted2015/10/17 10:30
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
スーパースターの条件のひとつは、「期待に応えることだ」と書いたことがある。
野球ならツーアウト満塁、一打逆転のチャンスにホームランを打つ。サッカーなら3分のロスタイムにパスを受けて、ドリブルで5人抜きで勝ち越しゴールを放つ。そういうプレーを何度も見せることでスーパースターになっていくのだろうが、2輪の世界でそういう期待に応えてきたのがロッシだ。
イタリアGPでは7年連続、自宅から10kmのミサノ・サーキットで行なわれるサンマリノGPでも2度の優勝を果たしている。125cc、250cc時代を含めて、イタリアGPでは地元イタリアのファンの期待に数え切れないほど応えてきたし、9度の世界チャンピオン獲得ではイタリア人だけでなく世界のロッシファンを喜ばせてきた。
しかし2009年にチャンピオンを獲ったのを最後に、若きチームメートのロレンソの後塵を拝することが多くなった。
その焦りもあったのか、'10年のイタリアGPでケガをした。そしてロレンソがその年のチャンピオンになり、ヤマハのエースの座から転落したロッシはドゥカティへ移籍。しかし、表彰台にもなかなか立てない苦しい2年間を経て、古巣のヤマハに戻ることを決意した。
そして今年がヤマハに復帰して3年目のシーズンになる。
もうチャンピオン争いは難しいかと思われたが。
昨年までは、時々勝つことはあっても、もうチャンピオン争いをすることはないだろう……と予想していたのだが、今年は見事に復活。
36歳のロッシが最高峰クラスで7度目、通算10回目のチャンピオン獲得にあと一歩に迫っている。
そのロッシが日本GPで、ロレンソに先着して2位でフィニッシュ。3位に終わったロレンソに4点のリードを築いて、その差を18点とした。
そのレース後の会見でロッシが語った言葉に、思いがけず「いいこというなあ」と唸ってしまった。