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J1残留を懸けた阿鼻叫喚の残り5節。
過去逆転が起こった勝ち点差は「2」。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/10/02 10:40
8月1日に大榎克己の後を継いで清水の監督に就任した田坂和昭。この苦境を乗り切ることができるか。
松本がここへ来て手に入れた“J1仕様”。
松本はここ5試合で3分け2敗で、最後に勝点3を挙げたのは7月25日の第4節・甲府戦までさかのぼらなければならない。ただ、ゲームプランがハマって勝利を掴みかけた試合はある。それは第10節・湘南戦だ。
この日の松本は運動量がストロングポイントの湘南に対して“真っ向からの走力勝負”を挑み、奏功した。16分にCKから先制点を奪った勢いもあって、カウンターでチャンスを創出したのだ。
その決定機を外し続け、アディショナルタイムで同点に追いつかれたのは痛恨だったものの、反町康治監督はチームの現状をこう表現した。
「言い方は変なんですけど、シーズンが再開してからメンバーが変わったこともあって、少しずつ“J1仕様”の抵抗力のあるチームになってきたかなと思っています」
6月に広島から工藤浩平、9月には韓国代表にも名を連ねるキム・ボギョンを獲得し、攻撃の起点ができた。また直接対決の清水、鳥栖を迎え撃つのはホームのアルウィン。ここまで約17900人の平均観客数を誇り、情熱的なサポーターのバックアップを受けられるのは心強い。
清水は2トップのフィジカルが頼みの綱か。
一方で敵地に乗り込む清水。2戦連続での大敗からの立て直しが必須となるが、広島戦に逆襲へのヒントがあるように見えた。
それは、前線のフィジカル能力だ。
以前の清水はショートパスをつないで攻撃を構築しようとしていたが、広島戦は試合序盤からシンプルに鄭大世(181cm/81kg)、ピーター・ウタカ(178cm/79kg)を目がけた攻撃を仕掛けた。4分のウタカ、20分の鄭大世のシュートはそれぞれ相手のブロックにあったものの、冒頭で挙げた鄭大世のヘディングシュートを含め、その力強さは異彩を放っていた。
「決めたけど……悔しいし、やっぱり勝点3が欲しいです」
鄭大世は自身のゴールについて言葉少なだったが、広島の守備陣も手を焼いた2トップに対して、松本の守備陣は耐えきれるのか。
ただ、反町監督は湘南戦後、このようなことも話している。
「今日の試合は横からのクロスに対して、特に飯田(真輝)がかなり奮闘しましたけど、それ(クロス守備)を考えてのメンバー選考でした」
サイドからのクロスを愚直に、粘り強く跳ね返す。松本にとっては清水2トップの封殺がこの試合の分水嶺となる。
果たして、どちらの“拠り所”が逆転残留に向けての大きな一歩となるのか――。
松本の地での90分間は、肉体とハートのぶつかり合いになること必至である。