スポーツのお値段BACK NUMBER
3兆円縮んだ音楽業界の試みに学ぶ。
スポーツ界に大規模な教育投資を!
posted2015/10/02 10:30
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph by
AFLO
7000万ドル(約84億円)
(ジミー・アイオヴィンとドクター・ドレーが音楽界の
次世代人材育成プログラムに投じた資金)
前回のコラムで、プロスポーツチームの営みに関する知識や経験を、個別のチーム内にとどめるのではなく、スポーツ界全体が共有する仕組みをつくることが重要だと書きました。今回は、その仕組みをつくる道筋について考えてみたいと思います。
ヒントを与えてくれたのは、アメリカの雑誌『WIRED』(2015年9月号)に掲載された特集記事でした。「RELENTLESS(容赦ない)」と題された記事は、ジミー・アイオヴィンという大物音楽プロデューサーの取り組みを詳細に伝えています。
エミネムやU2など、日本でもよく知られる数々のアーティストの成功を陰で支えてきたアイオヴィンは2008年、自身が発掘したヒップホップ・アーティストであるドクター・ドレー(Dr.Dre)とともにヘッドフォンのメーカーを立ち上げます。
「beats by dr.dre」ブランドのヘッドフォンはアメリカ国内で34%ものシェアを獲得するほど人気を集め、2014年にはBeats Musicを設立して音楽配信事業にも進出。その2社がアップルによって総額30億ドル(約3600億円)で買収されたのは昨年のことでした。
市場の急激な縮小を受け、教育プログラムを開設。
事業の成功によって大金を手にした2人は、新たな挑戦に打って出ます。7000万ドル(約84億円)もの私費を投じて、南カリフォルニア大学に「Jimmy Iovine and Andre Young Academy for Arts,Technology and the Business of Innovation」というプログラムを開設したのです。一流の講師陣を揃えて、アーティストのみならず、その成功を支えるテクノロジーやビジネスのプロフェッショナルを育成することが狙いだといいます。
アイオヴィンはなぜ、そうした学びの機会を設けることを考えたのでしょうか。契機となったのは、音楽市場の急激な縮小です。