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ブームを裏切り今季もBクラス目前。
広島カープに足りなかったのは何か?
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2015/09/30 11:05
笛吹けど踊らず――どの球場でも盛り上がったスタンドのファン熱気とは対照的に、ベンチの緒方監督は冴えない表情が増えていった。
我慢のリーダーが感情を露わにした試合とは。
「ただ、あのときは言わずにはいられなかった」
珍しく緒方監督が感情を露わにしたことがあった。
前述の9月6日、ヤクルト3連戦の3戦目。
カープは6回までに4併殺。先発戸田のボークは失点に絡んだ。山田の二盗に対して捕手石原が投じた先の二塁ベースは、二遊間の連係ミスで無人だった。
優勝の可能性を残していたチームとは思えぬミスが繰り返された。
「結局ミス、ミスだ。負け試合の要因はミス。もういいかげん、集中力のないプレーはいい。見飽きた。雨が降ろうが関係ない。これだけのお客さんに入ってもらっているんだから」
意地の5連勝に見えたヒント。
翌日から、ナインは開幕したばかりのような体の切れと動き、執念をグラウンドで示した。
引分けをはさんで5連勝で借金を完済。それは監督の檄に応えたというより、選手たちが示した意地のように感じられた。我慢するのではなく、素直に出す。
緒方監督が模索してきた方法論のヒントとなるものがあった。そうなると、監督をサポートするコーチ陣が果たす役割も大きくなる。
いろいろと考えを巡らせていると、目の前の試合はあっさりと終わった。
ほぼ同時刻に試合が終わった首位決戦は、ヤクルトが巨人に勝ちマジックを点灯させた。
勝ってまとまり、さらに強くなっていったヤクルトに対し、広島が強くなるためにまとまれなかったのはなぜか。“足りなかったもの”はひとつではない。