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ブームを裏切り今季もBクラス目前。
広島カープに足りなかったのは何か?

posted2015/09/30 11:05

 
ブームを裏切り今季もBクラス目前。広島カープに足りなかったのは何か?<Number Web> photograph by KYODO

笛吹けど踊らず――どの球場でも盛り上がったスタンドのファン熱気とは対照的に、ベンチの緒方監督は冴えない表情が増えていった。

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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KYODO

 手の平はかわいていた。

 9月27日、マツダスタジアム。グラウンドでは、Aクラス入りが目標となった広島と、逆転優勝にわずかな望みを残す阪神が戦っていた。

 夏の終わりを感じさせない強い日差しが、阪神ファンの黄色と広島ファンの赤で染まったスタンドに降り注いでいたが、グラウンドからはまるで熱が感じられなかった。両軍ともに混戦から脱落した喪失感を切り替えられないままプレーしているようだった。

 開幕前に大きな期待を背負った広島は今年も優勝を逃し、Aクラス入りも難しい状況となっている。

 あれだけ盛り上がったのにもかかわらず、チームに“足りなかったもの”は何か。グラウンドに視線を向けスコアブックを記しながら、頭の中で答えを探してみた。

開幕直後の7連敗は問題ではなかった。

 資料に目を移せば、3月末から4月上旬にかけての●●●●●●●(7連敗)が目を引く。

 開幕直後の7連敗は確かに広島の重荷となった。借金完済までに4カ月以上を費やしたのだから当然だろう。ただ、それが答えだとは思わない。戦績をまとめた資料だけをにらみつけても、ピンと来るものはない。

 パソコンに映る他球場の経過を見ると、巨人と首位決戦をしているヤクルトがリードしていた。

 ふとヤクルト関係者の言葉が思い出される。

「今、個々を見れば調子は決して良くないよ。ただ、チームがひとつになって戦っている。監督がうまく選手を乗せている」

 まだ広島にも優勝の可能性があった9月上旬。神宮球場での3連戦の前、「強いですね」という問いかけに、返ってきた言葉だった。

 しなやかさに強さを併せ持つ山田哲人の打力。記者席までスイング音が聞こえてきそうな雄平のフルスイング。川端慎吾や畠山和洋もいる。高い技術を持った選手たちが思い切り、気持ちよくプレーしていることで能力はさらに発揮される。そんな個々が集合体となるのだから、強いのは当然だ。

 3連戦は広島が1勝2敗で負け越し。数字以上にヤクルトの強さを痛感させられた3連戦だった。9月22日からの同カード2連戦も、広島の連敗に終わった。

「野球はメンタルのスポーツなんよ」

 故・三村敏之(元広島監督)さんが常々口にされていた言葉を思い出した。

【次ページ】 三村イズムを誰よりも濃く受け継いだ男。

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