Jをめぐる冒険BACK NUMBER
U-22選抜に五輪予選チームが集結。
J3町田に完敗した、有意義な経験。
posted2015/09/26 10:40
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
シルバーウイーク最終日の9月23日に行なわれたJ3・30節。2位の町田ゼルビアと12位のJリーグ・U-22選抜のカードがいつも以上の観衆とメディアを呼び込んだのは、後者を構成するメンバーが従来とは異なる意味合いを持つ選手たちだったからだ。
本来、Jリーグ・U-22選抜は、所属チームで出場機会を得られていない22歳以下の選手たちが、試合経験を積んだりゲーム勘を養ったりするためのチームだ。
ところが、今回はJ1の開催が少なかったことや、リオ五輪アジア最終予選が約3カ月半後に迫ってきたこともあり、J1クラブに所属し、最終予選に出場する可能性の高いU-22日本代表の候補たちが集められ、代表チームを率いる手倉森誠監督もコーチの肩書でベンチに入り、指揮を執った。
こうして注目を集めたゲームだが、「負けて失うもののあるチーム」と、「負けて失うもののないチーム」の差が大きく表れた。
スコアは1-0と最少得点差に終わったが、内容の差は歴然だった。
これ以上負けられなかった町田の意地。
負けて失うもののあるチーム――町田は首位・レノファ山口との勝点差を徐々に詰め、6差で迎えた前節、首位チームをホームで迎え撃った。ところが、結果は1-3の返り討ち。首位との勝点差が9に開いたばかりか、3位のAC長野パルセイロとに勝点差3にまで迫られ、このゲームを迎えていた。
「僕らはこの前山口に負けて、この試合に懸ける思いは全然違ったと思う」
そう振り返ったのは、左利きのテクニシャン、町田のMF鈴木崇文だ。
「試合前にすでに山口が負けたことを知っていたので、何が何でも勝たなければいけないゲームでした。それは全員が意識していたと思います」
90分間、コンパクトな陣形を保って激しいプレスを浴びせる。こぼれ球への反応や攻守の切り替えの意識も一枚上手で、サイド攻撃や裏へのロングフィードで押し込むと、元FC東京の重松健太郎が飛び込んでいく。
決勝ゴールが生まれたのは72分だった。鈴木崇のコーナーキックを身長191センチ、元ジェフユナイテッド千葉のFW戸島章が頭で合わせてネットを揺らした。
前節の山口戦後、相馬直樹監督は「これで終わったわけではない。中2日で試合があるが、すぐにファイティングポーズが取れるかどうか」と語っていたが、町田の選手たちは痛恨のダウンからすぐに起き上がり、強烈なパンチを繰り出してみせたのだ。