Jをめぐる冒険BACK NUMBER
U-22選抜に五輪予選チームが集結。
J3町田に完敗した、有意義な経験。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/09/26 10:40
厳しいリオ五輪アジア予選に臨むU-22のメンバーたち。今回の経験は彼らに何を残しただろうか。
相手が町田であったことが不幸中の幸い。
いいところなく敗れたU-22日本代表候補にとって幸運だったのは、この日の対戦相手がJ3の2位で、前節、痛恨の敗戦を喫したばかりの町田だったということだろう。
下位チームと対戦し、さして白熱することのない試合で勝ったとしても、最終予選に向けて得られるものは何もない。今のU-22日本代表に必要なのは、危機感であり、悔しさであり、チーム内での競争意識だ。手負いの町田が高いモチベーションと意地を持って、噛み付いてきてくれたからこそ、自分たちの不甲斐なさを感じることができたのだ。
「サッカーというのはそんなに甘いものじゃないよ、ということを伝えられたと思います。それをどう捉えるかは分からないですし、僕があまり生意気なことを言って、どう思われるか分からないので難しいところはありますけど。僕たちもそうですけど、真剣な場でやっているので、来るのならもっと真剣に来いよ、と思う部分はあります」
そう語ったのは、町田のキャプテンを務め、北朝鮮代表としてワールドカップ予選にも出場した経験を持つ李漢宰(リ・ハンジェ)だ。
「僕らはこれ以上負けられない状況でしたし、相手のメンバーを見たら、今後の日本サッカー界を背負って立つような選手たちばかり。プロ選手である以上、ひとつでも上のカテゴリーでやりたい気持ちと、若い選手には負けられないという思いを、みんなが持っていると思うし、僕は10以上も年が離れた選手には負けられないと思っていた。しかもかつて所属したサンフレッチェの選手が3人もいて、野津田選手のように親交のある選手もいる中で、多少なりともプライドを見せられたのではないかと思います」
ゲームの勝敗を分けるのは、技術や戦術だけではないということを、若い(と言っても多くはもう21、22歳だが)選手たちも、まざまざと感じたはずだ。
J3の順位に影響を与えていた可能性も……。
J3で、U-22選抜は今シーズン28試合を戦ってわずか5勝しか挙げていない。クラブで出場機会を得られない選手で構成され、町田にとってはいわば「勝利を計算できる」相手だったはずだった。それが今回突然フルメンバーに近いU-22日本代表候補と対戦しなければならなくなったのは、リーグでの順位争いを考えれば不公平以外の何物でもない。今回は町田が勝ったからいいものの、もし敗れていれば、大きなしこりが残っていただろう。
ただし、リオ五輪最終予選をにらんだU-22日本代表候補の強化という点においては、Jクラブと練習試合をするよりも、はるかに有意義なものだった。