モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
2年ぶりに表彰台獲得の中上貴晶。
さらなる活躍を期待しての辛口提言。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2015/09/20 10:30
Moto2クラスも4シーズン目。23歳はいまのGPでは決して若くないだけに、中上はより高いレベルでの結果が求められる。
優勝を狙うには、ハードタイヤへの適応が必須。
この日は雲が多く、思ったよりも路面温度があがらなかったことも中上には追い風となった。
終盤はタイヤの消耗でタイムを落とすことになるが、それまで作り上げた貯金でなんとか表彰台獲得にこぎつけた。
いまのMoto2クラスは、どれもほとんど同じといっていいマシンで、何か問題が起きてもセッティングだけでは対処できないことが多く、タイヤの消耗にあわせて乗り方を変えるなどライダーの頑張りに依存する部分が大きい。
今回の中上はその意味では及第点だったが、優勝を狙うには勝ったザルコや終盤に中上をパスしていったラバトのように、ハードで走れるようにしなければならない。
そしてもうひとつ中上が抱える課題は、序盤の混戦でポジションを落としてしまうこと。
ひとりで走るときは素晴らしい走りをするのだが、混戦になって自分のライン取りが出来なくなるとコース上の混雑が落ち着くまでポジションを上げられないというウィークポイントがある。
それを克服するためには、とにかく良いグリッドを獲得して序盤からトップグループに加わることが必要になる。
ウィークポイントを克服出来ないなら、MotoGPクラスのペドロサやロレンソのように先行逃げ切りライダーに徹した方が良いという発想だ。
友達であり、ライバルだった富沢祥也が散った地。
そして、今大会の表彰台獲得のもうひとつの要因に、2010年のサンマリノGPで不慮の事故死を遂げた故富沢祥也選手の存在がある。
レースを終えた中上は、「今日は祥也が後押ししてくれたと思う」と語った。
中上は'10年に一度はシートを失った。それと同じ年、子供のころからの友達でライバルだった富沢が、カタールGPで優勝するなどMoto2クラスで大活躍。
その後、サンマリノGPで富沢は亡くなるのだが、そのサーキットで表彰台に立ちたいという強い思いが精神的に大きな支えになったようだ。
「2年ぶりに表彰台に立てたことは嬉しいけれど、サンマリノGPで立てたということがすごく嬉しい。ここは自分にとって特別なレースだから」
スタートが決まり、序盤にタイヤをセーブして落ち着いて走ることが出来た。雲の多い天候も追い風になった。
中上にとっては、なにもかもが特別な力を感じることになったレースだったが、次戦からは自分自身との戦いになる。
次戦アラゴンGPはテストで好調だったサーキット。そして、ホームGPとなる日本GPと続く。
中上のシーズン後半戦の活躍に期待したい。