セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
テベスもピルロも去ったセリエA。
今季は'90年代生まれの下克上の時!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/08/26 10:40
U-21イタリア代表では10番を背負ってプレーし、サッスオーロでももはや不動のエースとなったベラルディ。
セリエAのルール改定も国産の若手登用を後押し。
願ってもないことに、優勝したU-21スウェーデン代表から、主将ヒリエマルクがパレルモへ、DFヘランデルがベローナへ今夏移籍してきた。リベンジの機会は、セリエAで早々に訪れる。もちろん、サッカーは個人の勝ち負けを争う競技ではないが、若者たちが大器へ脱皮するとき、同世代のライバルの存在は、大きな刺激になる。
セリエAでは、今季からトップチーム最大登録数が25人へ制限されるが、U-21選手は制限枠に含まれない。25人枠の中には、自前もしくはイタリア国内クラブの育成部門出身者を一定数含まなければならない「4+4ルール」も適用されるため、若手世代の重要度がこれまでより大幅に増す見込みだ。
ミランとの開幕戦を控えたフィオレンティーナMFボルハ・バレロは、9歳年下のベルナルデスキへ、かつて自らも通った道を説く。
「お前たちは(若すぎて)理解できていないかもしれないが、お前たちが今いるところにたどり着くだけでも、本当はとんでもない価値があることなんだ。ただし、ここから先は才能があるだけではダメだ。壁を破るために、このシーズンのチャンスを絶対に逃すな」
昨季、歴代最高齢得点王になったFWトーニ(ベローナ)も、自身が遅咲きだっただけに、若手に向けて“自分たち旧世代をさっさと乗り越えていけ”と叱咤する。
「38歳の自分が第一線にいられること自体は嬉しい。だけど、そんな状況を“マズい”と真剣に焦る若手選手がいなければおかしいだろう?」
敗戦で、ベラルディの内面にも変化が。
イタリア代表監督コンテは、U-21欧州選手権を視察するためにわざわざチェコまで出向いた。目的はただ一つ、近い将来のアズーリ招集に向けた自国タレントの成長ぶりを確かめることだった。
夏の敗戦は、問題児だったベラルディの内面に変化をもたらした。「早くフル代表の一員として、より上のレベルで戦いたい」という欲を消化し、プレーへの緊張感とエースとしての責任感を発散し始めたのだ。
「自己ベストの17ゴールをまずはチームと積み重ねる。そうすれば、EURO行きも自ずとついてくるだろう? 俺はそう信じている」
10カ月後のEURO本選に向けて、まだ道のりは長い。アズーリ入りを今季にかける若者たちの下克上を、今季セリエAの見どころの一つにしたい。