詳説日本野球研究BACK NUMBER
プロスカウトが初戦で去った甲子園。
しかし、スターは確かに存在した!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/08/21 16:30
決勝戦を161球完投、自らホームランを打って勝負を決めた小笠原慎之介。清宮、オコエが話題をさらった大会を最後に“持っていった”。
期待を超えるのがスターなら、オコエは既にスター。
3回戦の中京大中京戦では、守りで魅了された。1回表、6番・佐藤勇基が放った打球は左中間を破ろうかという大飛球。これをオコエは背走に背走を重ねて捕ってしまう。日刊スポーツはこのプレーに「オコエTHEキャッチ」の見出しをつけて裏1面を飾った。「ザ・キャッチ」とは1954年のワールドシリーズでジャイアンツのウィリー・メイズが演じたファインプレーを指している。
走攻守の中で、オコエが最も苦しんでいたのがバッティングだ。とくに内角球には対応し切れていない。その内角を準々決勝で対戦した興南の2年生左腕、比屋根雅也は執拗に突いた。三振、捕邪飛、(どん詰まりの)右飛、三振というのが第4打席までの成績。
第5打席が回ってきた9回表のスコアは3-3で、局面は2死二塁。ここでも内角を中心に攻められたが2ボール1ストライクからの4球目、内角低めのストレートをコンパクトに振り抜くと打球はレフトスタンドに一直線に飛び込んだ。
比屋根の内角球のキレのよさとコントロールの精度、そしてオコエがそれまで繰り返してきた凡退の数々を見ればホームランが出ると思うほうがおかしいが、オコエはそれを実現した。期待されている以上のことをやり遂げるのがスターの条件なら、オコエは既にスターと言っていい。
清宮幸太郎はゆったりとした立ち姿がいい。
早稲田実の1年生スラッガー、清宮幸太郎もマスコミやファンが期待する以上のプレーをこの大会で見せ続けた。1回戦の今治西戦では7回裏に甲子園初安打、初打点を記録し、2回戦の広島新庄戦では甲子園初の複数安打、そして3回戦の東海大甲府、準々決勝の九州国際大付戦では2試合連続ホームランを放ち、甲子園に清宮フィーバーをもたらした。
清宮のいいところは、打席に立ったときのゆったりとした立ち姿である。力めば力むほどインパクトに向かうスイングスピードは遅くなるが、清宮のバットはインパクトに向かうときだけエンジンが全開になる。
3回戦の東海大甲府戦で放った第2打席での2ランは2球続いたチェンジアップを打ったもの。第4打席は2死満塁の場面で116キロのチェンジアップをライトフェンス近くに運ぶ3点二塁打、第5打席は初球の高めストレートを振り抜いてライト線への二塁打というように、様々な場面で様々な球種を打ってチームの勝利に貢献してきた。