野ボール横丁BACK NUMBER
徹底したインコース攻めも本塁打に!
清宮幸太郎は全く“がばらない”打者。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/08/17 15:30
親指の付け根を痛め、テーピングをした中でのホームラン。一年生で甲子園2本塁打を放ったのは1983年の桑田真澄以来2人目となる。
「自分のホームランはああいうのが多い」
東海大甲府戦の本塁打は大きな放物線を描いたが、この日はそれとは対照的な当たり。しかし、本人は「自分のホームランはああいうのが多いんで」と納得顔だ。
「先っぽでも、詰まっても、ホームランにできるのが僕の理想。そういう意味では、よかったんじゃないですか」
第4打席は、外の直球を「反応で打った」と、今度は左中間フェンス上部にダイレクトに当たるツーベースを放った。
ここまで4試合で16打数8安打、打率はちょうど5割。しかも8安打中、2本が本塁打で、3本が二塁打だ。まさに手が付けられない状態になりつつある。
清宮はこう自己分析する。
「初戦のときと比べると、タイミングを取っているとき、楽にできるようになった。ミートの瞬間まで、力が入らないというか」
なかなかいない“がばらない”バッター。
楽天イーグルスの編成部長も務めていたことがある楠城も、試合前、奇しくもスカウト目線でこんな話をしていた。
「我々の世界の言葉で、打つ前に力が入ってしまうバッターのことを“がばる”っていうんですけど、彼はがばらない。指名選手を判断するとき、ピッチャーなら耳の横に腕がくるまで力が抜けている選手、バッターなら体の前を腕が通過するまで力の抜けている選手を探す。それができるバッターは、なかなかいないんですよ」
九州国際大付のインコース攻めも、結果的には、通用しなかった。
清宮は事も無げにいう。
「もともとインコースが打てないわけではないので」
「なかなかいないバッター」であることは、もはや疑う余地がない。