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「最低限」補強は余裕の表れなのか?
チェルシーが過ごす静かな夏の裏側。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2015/07/31 10:50

「最低限」補強は余裕の表れなのか?チェルシーが過ごす静かな夏の裏側。<Number Web> photograph by Getty Images

インターナショナル・チャンピオンズカップでバルサを下すなど、順調な調整を見せているチェルシー。モウリーニョ復帰2年目にしてプレミアを制覇、3年目はCLを狙う。

スタジアム建替えで950億円が必要な懐事情。

 ファイナンシャル・フェア・プレー(FFP)規則により、採算を度外視した補強が許されない現実は他クラブも同じだが、チェルシーには、移籍市場での大盤振る舞いを控えるべき別の理由がある。クラブの本拠スタンフォード・ブリッジの建替えだ。さる6月には、近隣の住民に既にコンセプト案が公開されている。

 約42000人収容のスタンフォード・ブリッジは決して小さなスタジアムではないが、優勝候補4チーム中では最小規模の「我が家」でもある。ホームゲームの入場料収入はクラブにとって最も確実な収入源であり、計画通りに60000人収容の新スタジアムが完成すれば、入場料収入の大幅アップによってFFP規則対応も楽になり、ピッチ上での長期的な競争力維持にもつながる。

 しかし、一時的に見れば建設費による予算圧迫は避け難い。総工費は推定で5億ポンド(950億円)以上。ロマン・アブラモビッチがクラブとは別会社として負担することになるが、オーナーの私財から巨額が持ち出されることに変わりはないのだから、必然的にクラブ投資にも影響が出る。

 さらにクラブの帳簿には、工事開始予定の2017年から3年間、「借家」の賃貸料として、年間1100万ポンド(約21億円)前後の新たな支出項目も生まれる。現在「借家」としては、ウェンブリー・スタジアムが有力候補だ。

モウリーニョは「やりくり上手」も期待されての就任?

 アブラモビッチがスタジアム建替え計画に本腰を入れたのは2013年と言われている。モウリーニョ再就任の年だ。「愛される環境」を求めてチェルシー復帰を決めた指揮官だが、移籍市場での「やりくり上手」も仕事の一部と認識しての就任だったに違いない。実際、前体制から受け継いだロメル・ルカク、ケビン・デブライネ、ダビド・ルイス、フアン・マタの他、就任後に加入したアンドレ・シュールレも迷わず放出している。いずれも獲得時の移籍金を上回る額での売却だ。

 今夏も、セサル・アスピリクエタの控えが心許ない左SBの補強に際し、アウクスブルクのババ、ガラタサライのアレックス・テレスといった候補との交渉成立を待たずに、在籍1年で力不足と判断したフィリペ・ルイスを、獲得時とほぼ同額でアトレティコ・マドリーに売り戻している。

【次ページ】 理想を言えば欲しい選手はいるが、待つことも選択肢。

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