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「最低限」補強は余裕の表れなのか?
チェルシーが過ごす静かな夏の裏側。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2015/07/31 10:50

「最低限」補強は余裕の表れなのか?チェルシーが過ごす静かな夏の裏側。<Number Web> photograph by Getty Images

インターナショナル・チャンピオンズカップでバルサを下すなど、順調な調整を見せているチェルシー。モウリーニョ復帰2年目にしてプレミアを制覇、3年目はCLを狙う。

理想を言えば欲しい選手はいるが、待つことも選択肢。

 理想を言えば、ユベントスが7100万ポンド(約135億円)と値踏みしているポール・ポグバを、早々にボランチに加えたかっただろう。エバートンに2000万ポンド(約38億円)のオファーを断られたジョン・ストーンズも、今年35歳になるCBジョン・テリーの後継者としてスムーズに獲得してしまいたいはずだ。

 だが移籍市場での収支も念頭にある指揮官は、交渉がしやすくなるのであれば、今冬または来夏まで待っても良いと考えているのかもしれない。現エースのジエゴ・コスタを獲得した際に、シーズン中で交渉が難しい冬ではなく、昨夏まで半年待ったように。

 そして選手の説得に際しても、欲しがっている監督がモウリーニョだということはメリットになる。例えば、双方が「話をして直ぐに決まった」と認めている昨夏のセスク・ファブレガス移籍。チェルシーの監督が、前任のラファエル・ベニテスか、その前に途中解雇されたロベルト・ディマッテオのままだったら、元アーセナル主将がチェルシーでのプレミア復帰を即決できたかどうかは怪しい。

戦力的な上積みなしでも、優勝候補筆頭に。

 ではモウリーニョは、戦力的に昨季から上積みが少ないチームでプレミアのタイトルを防衛できるのか? 国内のブックメイカーやメディアによれば、答えは「イエス」。筆者も、まだ今季は可能と見る。

 とはいえさすがに、2位と8ポイント差、4位と17ポイント差という昨季のような余裕はあり得ない。マンCは昨季の折り返し時点で首位に並んだ戦力を持っているし、アーセナルはFAカップ連覇で自信を増し、待望の本格的な守護神をチェルシーから奪って意気込んでもいる。マンUもその補強姿勢からして、優勝争いに絡もうと必死だ。

 しかしながら僅差であればあるほど、直接対決などの負けられない一戦でポイント奪取に徹することができ、かつ自身が意図する戦い方を着実に実行できるチームを作るモウリーニョの手腕が物を言う。

 今季はオーナーの要望である「攻めて勝つ」スタイル確立への取組みを更に進める必要があるが、同時にプレミアでのタイトル防衛に加えて昨季は16強敗退の期待外れに終わったCLでも優勝が目標だ。そうなれば、結果狙いの「モウリーニョ流」が有効であり続ける。

 攻撃を基本姿勢とするライバル3チームの監督のうち、必要とあれば結果重視に割り切れる人物はマンUのルイス・ファンハールだろう。昨季の4位浮上も、足下で繋ぐ理想に固執せずに途中からロングボールによる直線的な攻撃を混ぜるようになった変化によるところが大きい。とはいえ、大幅に顔ぶれが変わりそうなチームが、指揮官の考えに合わせて柔軟に戦えるだけの完成度を身につけられるか、という懸念もある。

【次ページ】 最も重要な補強は、モウリーニョの再招聘だったのだ!

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