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なぜ門別競馬場は黒字化できたのか。
ネットの力と、馬産地独自の魅力。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byAkihiro Shimada
posted2015/07/25 08:00
門別競馬場の直線にはモニターもあるが、やはり全体に暗いことは否めない。照明の増設が望まれるところだ。
平成26年度、ついに累積赤字をすべて解消。
かつてホッカイドウ競馬は、岩見沢や旭川、札幌など道内の複数の競馬場を順繰りに回って実施していた。が、コストがかさみ、巨額の累積赤字を抱えたため、平成21年から開催を門別競馬場に実質的に一本化(札幌でも6日間だけ開催)して赤字体質からの脱却をはかった。そのさい、平日開催という条件があったため、昼間仕事をしている人を呼ぶべく、すべての日をナイター開催とした。
その効果が少しずつ現れ、平成22年度からは一般会計からの借り入れが不要になり、競馬特別会計内での繰上充用により対応してきたが、平成25年度の1億7753万円、26年度の4億600万円の単年度収支により、26年度末に繰上充用額を解消。さらに収益として1億9100万円を確保した。
このように状況はかなり好転したわけだが、今なお主催者サイドは危機感を持ちつづけている。佐藤氏は言う。
「ネット環境は良好なのですが、北海道内の景気が今ひとつなこともあり、道内の売上げは減少しているんです。門別競馬場の入場者は若干増えているのですが、道内の場外発売所『Aiba』の売上げを、もっと上げて行きたいと思っています」
充分に奮闘といえるが、現地観戦客は案外少ない。
日本各地にあった地方の競馬場が次々と閉鎖に追い込まれ、例えば北関東には競馬場がひとつもなくなってしまったことなどを考えると、充分以上に奮闘している。
だが実際に足を運ぶと、現地で観戦している客が案外少なく、ゆったり見られるのはいいのだが、ちょっと寂しい。私が行った7月16日、木曜日の入場者数は638人。300人か400人しか入らない日もある。いくらネットでの売上げが伸びているとはいえ、サッカーの無観客試合のようになってしまったら、競技のクオリティに響くのではないか。
ネットやテレビというのは、本来それが先に来るのではなく、本当は現地で観戦したいのだが、行けないからそれで代用する、という性質のものであるはずだ。要は、たくさんの人が集まる場所、行きたがる場所だからこそ、テレビで見る人も多く、ネットで馬券を買う人も多くなる、というのが理想的な姿だと思うのだが――。
先述したように、札幌からクルマで1時間以上かかる立地条件、平日開催といったことを考えると、現状でよしとすべきなのか。