プロ野球亭日乗BACK NUMBER
オールスターでも悔しがる森友哉。
やはり、本気の勝負こそが面白い!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/07/24 10:40
オールスターでは、高校時代の“先輩”藤浪晋太郎に打ち取られた森友哉。お祭りであっても勝負は勝負。その姿勢は多くのファンの共感を呼んだのではないだろうか。
純粋に一発狙いのフルスイングを披露した森友哉。
そんな今年のオールスター戦の立役者の一人となったのが、ファン投票で史上最年少の最多得票で出場してきた西武の森友哉捕手だった。
森がファンの度肝を抜いたのは、オールスターでは西武・清原和博以来という、第2戦で放った10代での本塁打だった。
6回に代打で登場すると中日・大野雄大投手の初球、甘く入ってきた148キロのストレートをフルスイングで右翼席に叩き込んだ。
「会心ではあったんですけど、もうちょっと飛んでいるかと思った。あまり飛距離が出てなかったんで……」
マツダスタジアムのスタンド前段に飛び込んだことがちょっと不満そうな口調だったが、この大舞台に代打で出てきていきなり初球を思い切り振り抜ける。失敗を恐れないこういう気持ちの強さが、この選手の一つの武器なのである。
「三振したらカッコ悪い」とかそんなマイナス思考は全くない。普段はセンターを中心に確率を重視したフルスイングを心がけるが、球宴では「意識が違う」と純粋に一発狙いのフルスイングに徹して1球目から強振してきた。そして狙い通りの結果を残すところが、この若者の並外れたスケールとスターの匂いを感じるところだ。
藤浪晋太郎との大阪桐蔭対決で、ドームの天井直撃打。
ただ、このド派手な一発も凄かったが、それよりもこの選手に共感を感じたのは、実は第1戦で見せたある表情だった。
第1戦の6回に実現した阪神・藤浪晋太郎投手と西武・森友哉捕手の“大阪桐蔭対決” ――この回先頭で打席に入った森が1ボールから藤浪の153キロの内角ストレートをアッパー気味にフルスイング。カチ上げるように振り抜いたバットの先が天を向いた。するとその先で強烈なバックスピンがかかって高々と打ち上がった打球が、ドームの天井にブチ当たったのである。
東京ドームの天井の高さは、一番高い二塁ベース後方上で56.19メートル。打球はマウンドからやや一塁寄りのフェアグラウンドに上がったので、それでも55メートル前後は打ち上がった計算になる。天井に当たって跳ね返ってきたボールを、DeNAのホセ・ロペス一塁手がフラつきながら捕球した。
二人の対決の結果は一塁フライで藤浪に軍配が上がったわけだが、それでも森が放った天井弾にドームはしばしどよめきに包まれた。
そして印象的な場面は、実はこの後だった。