プロ野球亭日乗BACK NUMBER
オールスターでも悔しがる森友哉。
やはり、本気の勝負こそが面白い!
posted2015/07/24 10:40
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
NIKKAN SPORTS
悔しがる姿が、見る者に本気を感じさせる――今年のオールスターゲームを観てそんな思いに駆られた。
夢の球宴と言われるオールスターゲームだが、今年も視聴率は第1戦(東京ドーム)が10.5%、第2戦(マツダスタジアム)が9.9%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)とゴールデンタイムの合格点と言われる13%には、はるかに届かなかった。
ただファン投票でも広島の選手が5人選ばれるなど、広島人気は別格だったようだ。広島地区の視聴率だけを切り取れば、第1戦が平均で29・4%、カープ女子のお目当ての黒田博樹投手と前田健太投手の新旧エースリレーとなった第2戦は平均36・2%、瞬間最高で45.5%と驚異的な数字を叩き出している。
そして試合内容を見てみれば、そういう広島での高視聴率も決しておかしくない内容のゲームだった。第2戦に先発した黒田は、試合プレーボール第1球にフォークを選んだのが象徴的なように、最後まで真剣勝負に徹した姿は「常に全力」の黒田らしさ全開だった。真っすぐだけで押しまくって2回を無失点で抑えた前田のピッチングも見応えのあるものだった。
「ファンを楽しませる」という言葉の意味は?
かつてオールスターでは、巨人・阿部慎之助捕手による大道典良選手のモノマネ打席や、阪神・西岡剛内野手が仕掛けた同・藤浪晋太郎投手と日本ハム・中田翔内野手による乱闘小芝居など、「ファンを楽しませる」という言葉を履き違えたパフォーマンスが横行した時期があった。そういうおちゃらけたプレーが、オールスター戦というプロ野球にとっては特別なステージの価値を貶め、ファンにそっぽを向かれる理由の一つにもなっていたのだが……。
今年の2試合で感じたのは、黒田や前田だけでなく、出場していた選手が自分たちも真剣に勝負を楽しみ、その真剣勝負を見せることでファンに楽しんでもらおうという意識が見えていたことだった。その真剣さが点差に関係なく、今年のオールスターの試合自体の面白さを作っていたように思うのである。