プロ野球亭日乗BACK NUMBER
オールスターでも悔しがる森友哉。
やはり、本気の勝負こそが面白い!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/07/24 10:40
オールスターでは、高校時代の“先輩”藤浪晋太郎に打ち取られた森友哉。お祭りであっても勝負は勝負。その姿勢は多くのファンの共感を呼んだのではないだろうか。
ベンチで、悔しさを一杯に表して天を仰いだ森。
直後にテレビで映されたベンチの表情が、森の本気度を物語っていた。唇をかみしめるように表情を歪めて、目をつむると悔しさを一杯に表して天を仰いだ。
「完全に捉えたと思った。やられました」
インタビューでの森の言葉だ。
結果は完敗だったが、勝負は紙一重だった。タイミングはほぼ合っていたが、わずかにボールの下を叩きすぎて打ち損じた。だからこそ余計に悔しさが溢れたのだろう。
そういう思いのすべてが、ベンチで見せた森の表情には凝縮されていたわけである。
あれだけ悔しがるということは、森が高校時代にバッテリーを組んだ1つ年上のこの右腕との“勝負”に、いかに本気で挑んでいたかの証だった。その悔しがる姿を見たとき、オールスター戦を観戦していたファンもまた、この舞台でしか実現できない“勝負”の面白さ、醍醐味を改めて受け取ったはずだ。
オールスターを、緊張感のある特別なステージに。
「普段にない緊張感を感じました」
こんな感想を語ったのは、初出場を果たした巨人の鈴木尚広外野手だった。
足のスペシャリストとして監督推薦で出場した鈴木が、第1戦で代走に指名されるとスタンドは拍手に包まれた。その中で二盗を決めて口にしたのが、この言葉だった。プロ19年目、37歳のベテラン選手でも、レギュラーシーズンにはない緊張感を感じる。そういう特別なステージでなければ、オールスター戦は選手にとっても見る側のファンにとっても意味がないだろう。
それを実現できるのは、選手一人一人の気持ちとプレーしかない。森の悔しがる表情を観て、改めてそのことを実感したのである。