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度重なる怪我が復活の伏線に!?
阪神・福留孝介が二軍で考えたこと。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2015/07/08 11:40
前半戦の折り返しを目前に、残り全試合先発出場を目指す38歳のベテラン。阪神のペナント争いのキープレイヤーになりつつある。
屈辱のファーム落ちを打棒復活の原動力に。
ならば、なぜ2013年に阪神に移籍してから2年間は低調だったのか、と問われれば、それはやはり、怪我が最たる原因となるだろう。
2013年は、左ひざ半月板を手術した影響もあり1割9分8厘。キャリア最低の数字に終わった。'14年も、3月30日の巨人戦での守備でセカンドの西岡剛と衝突したことにより鎖骨と肋骨を痛め、さらには肺挫傷であることも判明。怪我を押して出場したことで打撃は下降線を辿り、6月には二軍に落とされた。
ただ、'14年に関しては、結果的にそれが「怪我の功名」となり、復活を遂げることとなる今季への大きな伏線にもなった。
ファームにいる間、福留は自分のフォームを見つめ直し、テイクバックを小さくしたスイングを心がけるようになった。一軍復帰を果たした夏場以降は、自らが思い描いたスイングを体現できるようになり、9月は3割4分3厘、4本塁打、13打点と意地を見せた。広島、巨人とのCSでもトータルで21打数7安打、2本塁打。阪神の日本シリーズ進出に大きく貢献した。
豊富な経験が先入観を持たない意識を生む。
今年は春季キャンプからバットを振り込むことで、フォームの完成度を高めた。
200スイング以上のフリー打撃に居残りでのロングティー、試合がある日でも特打することも珍しくなかった。そのことで、下半身が安定するといったフィジカル面の強化へと繋がり、スイングもよりスムーズになったという。
福留が言う「キャンプからいろいろやってきた」ことが、今季の復活劇へと繋がったことは確かだ。しかし、そこに福留の経験が生かされていることも忘れてはいけない。
日米通算17年間で培ったベテランの、「打席では先入観を持たない意識」が、主力として試合に出続ける今季、効力を発揮している。
本塁打や決勝打を放っても、「初球から思い切りいった」など簡潔なコメントが多く、自分の一打を具体的に言及することはないが、福留は打席での意識についてこう語っている。