野球クロスロードBACK NUMBER
度重なる怪我が復活の伏線に!?
阪神・福留孝介が二軍で考えたこと。
posted2015/07/08 11:40
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Nanae Suzuki
全チーム借金――。未曾有の事態を巻き起こして荒れに荒れていたセ・リーグの覇権争いにおいて、7月7日現在、かろうじて借金がないのは阪神と巨人のみである。
しかしながら、他チーム同様、チーム状況が良好なわけではない。
成績を見ても打率2割3分9厘、防御率3.84はともに12球団中11番目。交流戦から連勝、連敗を繰り返している不安定な戦いぶりも、ペナントレースで突出できない大きな原因でもある。
だが、リーグ制覇への光明はある。
なぜなら、今の阪神には福留孝介という「打線の核」がいるからだ。
打率は2割7分2厘ながら、チームトップの14本塁打をマーク。今や不動の3番として快打を連発する福留が、阪神打線を牽引していることは疑いの余地もない。
「いやいや、そんなことはないですよ」
しかし福留は、あっさりと否定する。そう本人が言ったところで、彼の打撃が上昇気流に乗ってきていることは、何より数字が証明しているのだ。
交流戦後の成績は53打数18安打、6本塁打。6月27日と7月4日のDeNA戦で放った2ホーマーが象徴するように、ここぞという場面では長打でもってチームの期待に応えてくれる。まさしく、「頼れる主砲」というわけだ。
虎党からすれば「やっと結果を残してくれているか」と溜飲を下げるところだろうが、中日時代に2度の首位打者に輝き、メジャーリーグでも主力を務めた男なのだ。万全の状態であれば、このくらいの成績など当たり前のように残してくれるのである。
キャンプから調整を続けた打撃が実を結ぶ。
決して寡黙ではないがメディアの前では雄弁というわけでもない。そんな福留でも、少し踏み込んだ質問をすれば、端的にではあるがしっかりと真意を述べてくれる。
例えば、打撃フォームについて。
――形を変える、または修正を施したことが、今の結果に繋がっているのか?
福留は「いやいや、なにも」と反射的に首を振りながらも、こう続ける。
「急に変えようと思っても変えられるものではないから。キャンプからいろんなことをずっとやってきたなかで、1年間のシーズンで調整していくものなんでね」
プロ野球選手がおしなべてそうであるように、福留もシーズン開幕まで「今年はこれでいこう」と手応えを掴めるまで形を作り上げてきた。
今季はそれが実を結んでいる。